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ぼくだけの師匠
第1章〜ぼくらを繋ぐ副作用〜
11.師とは何か
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長く短い眠りから目を覚ました。
辺りを見渡すと、そこは病室だった。
しかし、ベッドが足りない。
寝ぼけている頭を働かせ、個室という結論に辿り着く。
個室代は、病院によってはぼったくりクラスだと頭で考えた。
如月の現実主義めいたところは、父親似に見えて仕方ない。
扉が開く音がして我に返る。
入院二日目。未だに病室に慣れない。
人は慣れないことをすると老けるらしい。
鏡には老けたわけでもない自分が映る。

「歌川、風間、見舞いか?
別にいらないぞ?俺は元気だ」

「マンゴーの差し入れだ。」

「マンゴーは嫌いですか?」

「好き、かな?うおっ、これ高いやつじゃんか。」

如月は早速開けて食べ始める。
普通なら開けて食べ始めはしないのだが。
誰も咎めないため、食べ続ける。
風間は歌川を追い出し、思いのうちを吐いた。

「菊地原はどうする。心配していた」

「師匠として、俺は失格だな。
なにもしてあげていない。」

風間は口を挟まず、如月の話を聞くことにした。

「何も教える気はなかったのさ、初めから。
菊地原・・・を弟子にしたかったわけじゃない。
それに・・・風間には悪いが、菊地原が戦うのを見るのが怖い。」

「何をいう。緊急脱出が・・・」

風間はそれ以上は言わなかった。
緊急脱出をただの飾りにしか、彼女は見ていなかったからだ。

「菊地原が強くなったら、遠征にも出て、強いやつと戦って、必然的に危ない目に遭う。
我が儘だ。俺の我が儘だ。
俺が守れなくなる。今でさえ、守れなくなるところなんだ!!
だから、あいつに何も教えたくない。
できれば俺を忘れて欲しい」

「身勝手だな。菊地原の意見はなしか。
そもそもお前は菊地原の意見を聞いたことはあるか」

如月は痛いところを突かれ、目をそらした。
初対面の時にしろ、今にしろ、菊地原の意見は聞いていない。
本当に身勝手に決めつけて、菊地原に押し付けている。
風間はよく見ていた。

「俺って女だな。
『女は男の傍にいれれば幸せ』って言うが事実らしいぞ?」

風間は如月の頭を撫でた。
撫でられることは彼女にとって久しぶりであった。
それを心地いいと感じかは別として。
その日の夜。
風間隊は防衛任務を終え、作戦室に荷物を取りにきていた。
菊地原や歌川には学校の荷物がある。
風間にも荷物ぐらいある。
ある程度帰りの支度を終えた頃、風間に電話が入った。
冷静に電話に出ると、風間は菊地原を見た。
菊地原は当然聞こえていたが、風間はわざと菊地原に向かって言った。

「菊地原、如月が・・・」

意識不明らしい、と。
菊地原は医師の話を何割程聞いていたか分からない。
恐らく半分も聞いていないだろう
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