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幻に潜む英雄譚
一話
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それってつまり、炎とか氷とか出せないの?」

『雷および水、速度強化や毒系でもないぞ。どちらかと言うと干渉系じゃの、これは』

 それを聞いた瞬間、俺の中で何かが崩れた。
落第騎士の世界は、簡単に言えば強さがものを言う。超電磁抜刀術の雷切、総てを両断する風の剣帝、魔力を食いちぎる七星剣王、全身を鋼鉄化する鋼鉄の荒熊(パンツァー・グリズリー)、圧倒的な火力の紅蓮の皇女、そして無冠の剣王(アナザー・ワン)――どいつもこいつも化け物じみて、羨ましくて、妬ましくて、俺もこうなりたいと思っている人物たちだ。

 そしてその中の大半が、物理攻撃がトップクラスの実力を持っている。
干渉系の能力何て、俺にとってはただの騙し技で、羨ましくとも何とも思わない。

「はぁ……。はずれクジ引いたなこりゃあ」

『なにを馬鹿なことを言っておるんじゃお主は』

 すると神は心底呆れた顔をしながら、俺にそう呟いた。
お前の考えは全て間違っているといわんばかりに。

『そんなに羨ましいなら、お主も努力したらいいじゃろ。お主が憧れている者たちのように』

「そんなに簡単にできるなら苦労しねーよ。さっきも言ったように、全員が化け物じみてるんだよ。俺が努力したところで、到底最後までやりとおせる自信はねーよ」

『そんなのまだ分からんじゃろ。化け物じみている奴は、それそうおうの努力をしてきたってことじゃ。簡単に言えば、努力したら努力した分だけ強くなれる世界っちゅーことじゃろ? ならお前にも望みがある。いっぱい努力して、強くなればいいんじゃ』

『どーせ生まれ変わるんじゃ。今度は精一杯、努力すればいいじゃろ。違うか?』

 俺の目をジッと見ながら、神はそう言い切った。
……なるほど、腐っても神は神ってか。信憑性がありすぎだよ。

「……ちっ。神様にそう言われちゃあ、仕方ないよな。
どうせ前世ではアニメを羨ましがるオタクだったし、そろそろ本気をだすか」

『そうしとくのが一番じゃろ。二度目の人生まで棒に振るつもりはないじゃろ?』

「当たり前だよ――俺が、あの世界で『天』に立ってやる。比翼だって超えてやる」

『(流石にそれはまだ早い気はするが、まぁヤル気になってくれたんなら万々歳じゃ。これでさっさと転生してくれれば、ワシの仕事も終わりじゃ)じゃあ、生き変えさせるぞい』

「おう、よろしく頼む」

 そうして俺は、神の口車にまんまとひっかかったと知らないまま『落第騎士の英雄譚』の世界へと転生した。































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