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執務室の新人提督
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! せめて許可くらい取りなさいよ!」
「じゃあ、今度執務室で書類相手に唸ってる提督とか描くけど、どう?」
「曙! なんか凄いニッチっぽいけどめっさ欲しいのがキタコレ! どどどどどうする!?」

 割と本気で焦りだした妹に、曙は何とも言えない相で肩を落とした。どうして妹はこうも欲望と言ってよいかどうかも分からない何かに素直なのか、と嘆いたからだ。
 まず頷いて良い物ではない。であるから、曙は秋雲を睨みつけ口を開いた。

「提督が執務室でくつろぎながらお茶を飲んでいる絵にならないの?」
「曙もニッチだねぇ……」

 どこか感心したような呆れ顔で呟く秋雲に、曙は鼻を鳴らした。
 彼女達がここに居るのは提督のためだ。その提督が、僅かでも日常を穏やかに過ごしているその瞬間を欲する気持ちは、捻くれていようが捩れていようが素直に欲しいのである。
 漣の琴線に触れた書類を相手に唸る云々も、それと同類だ。
 提督の凛々しい顔も、考え込む顔も彼女達には必要ない。いや、惹かれない訳ではないが、それでも一番欲しいのは愛する人の普段の姿だ。
 曙の相に何を見たのか。秋雲はペンのノック部分で軽く米神をかくと二度三度と頷いた後応えた。
 
「それでいいなら、まぁ秋雲も初霜に交渉して頑張るけどさぁ……」

 執務室の中のことであるから、流石に秋雲だけでは決められない。それには秘書艦初霜の許可が必要だ。もしくは、初霜にそういったシーンをスマホか何かで撮って貰うかである。
 秋雲自身も欲しいワンシーンであるから、許可を得るための労力には厭わないが、こういうところは誰も彼も一緒だと呆れもしたのだ。
 
 その言葉で、曙と漣は互いの顔を見て頷きあった。二人の両目に溢れるのは決意の光である。案外安い光であろうが、それを突っ込んではいけない。少なくとも彼女達は真剣である。
 
 曙はタオルを置いて先ほどまで踊っていた場所に戻り、漣は音楽を鳴らすためにプレイヤーに近づいていった。と、漣は再生ボタンを押す前に、秋雲が来る前に言おうとしていた事を思い出し、なんとなくそれを口にした。
 
「そう言えば、ご主人様ってどんな音楽が好きなの?」

 なんともない問いだ。が、その問いに曙は動きを止め、秋雲はスケッチブックから目を上げて漣を見ていた。口にした漣自身、軽い気持ちで口にした言葉であったが、それを知らぬ自身に不甲斐なさを覚えたのか、徐々に目を細めて俯いていった。
 そのまま自身のつま先に視線を落とそうかと言う漣は、しかし素早く顔を上げて秋雲を見た。
 漣の挙動につられて、曙もまた秋雲を見る。そして曙は、あぁなるほど、と漣の行動を理解した。
 
 秋雲は提督と親しい艦娘の一人である。
 であれば、提督のそういった趣味も知っている筈だと漣は見、曙はそ
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