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執務室の新人提督
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って、明石は箱を開ける。中にある物見た隼鷹は、げ、と小さく呻いた。
 その姿に、明石は苦笑を漏らして肩をすくめる。隼鷹が何に対して呻いたか、明石には分かるのだろう。
 
「このランナーっていうところから各パーツを綺麗に取っていって、一つ一つ組み上げていくんですよ」
「うわぁ……面倒くさそう……」

 隼鷹の言葉に、あぁやっぱりそれか、と明石はまた肩をすくめた。隼鷹という女性からすれば、なんでそんな面倒なことを、という事なのだろう。艦娘としては、恐らく自身や姉妹、それに近い存在、または戦闘機の模型程度は組み立ててみようかと興味も惹かれるだろうが、その程度だ。
 進んで組み上げたい、と思う事はないのだろう。
 これは隼鷹だけではない。ここに来て、模型に気付いた艦娘達の殆どがこれである。明石としてもその辺はなんとなく分かる物なのだ。
 ただし、
 
「言っちゃ悪いけど、誰が買うの?」
「えー、ちゃんと居ますよ? 夕張とか大淀とか北上とか秋津州とか」

 しっかり買っている艦娘も居ないわけではない。
 少々偏りはある訳だが。
 
「北上と秋津州は工作艦経験があるからかねぇ?」
「なんとなく、手先を動かして何か作りたいって時があるみたいですよ?」

 ちなみに、そんな事を言っている明石も模型を確りと組み立てる艦娘の一人であった。工作艦の性か、彼女の一個人的な趣味であるのか、どうにも組み立てられる物があると、ついつい一つくらいは、とやってしまうのである。
 
「で……夕張……はまぁ分かるか。大淀がどうして模型を買ってるのさ?」
「凝り性ですから、大淀も」
「あー……」

 明石の応えに、隼鷹は納得と声を上げて頷いた。大淀という艦娘に、明石が言うような特徴があるのも事実であるが、実際は友人である夕張と明石が面白そうに組み立てている姿に影響を受けて、気付いたらそれなりにはまっていた、という状況だ。
 もっとも、明石などは放っておいてもいずれはまった事だろうと眼鏡が似合う友人の一人を思い浮かべるだけである。
 
「でも、たったそんだけしか購入してないなら、なんでそんなに場所をとってんのよ?」

 隼鷹は明石の手にある箱が先ほどまで置かれていた棚を見上げた。
 カウンター傍に置かれた、それなりに大きな棚に様々な艦の絵が描かれた箱が所狭しと並べられている。それはどう見ても、先ほど明石が口にした艦娘達の為に用意したにしては大仰に過ぎるのだ。
 まさか自身の趣味の為だけに並べたのか、と半眼で無言のまま訴える隼鷹に、明石はどうしたものかと腕を組んで俯いた。
 驚いたのは隼鷹だ。軽く突いてみたら、明石が本気で悩みだしたのである。これは何かあると悟った隼鷹は、周囲を見回した後声を潜めて明石に問うた。
 
「あぁいや、な
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