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執務室の新人提督
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だ。艦娘は艤装を装備して初めて艦娘と呼ばれるに足る物となる。艤装のない彼女達はその見た目通りの能力しか有しない、ただの少女だ。だが、それでも地力を上げる事に意味が無いという事は無い。苦しみを知れば逆境に強くもなれる。そして、実戦で訓練以上の事は出来ない。ゆえに、少女達の体に負担が出ないように、神通達は駆逐艦娘達に訓練をつけている。
 が……その負担の残らない訓練でも、端から見たらどう見えるかといえば。
 
「青葉、何気にスパルタ気味ですが、よろしいですか?」

 皆一斉に首を横に振った。水雷戦隊、という艦隊の露払い、または負傷艦の護衛の為の戦隊を組む軽巡、駆逐には火力よりも速さが求められる。それでいて遠征の為の持久力も求められる為、自然地力をつける為の訓練は端から見たら熾烈を極めるものになりがちだ。
 それに比べれば、鈴谷達火力保有艦娘達、戦艦、重巡は戦術、砲撃理論や基礎体力を鍛えるだけですんでしまう為、人としての部分を延ばす必要はあまりない。
 妙高や高雄も相当きつい訓練プログラムを組んだつもりでも、軽巡達のそれに比べるとおかしな言葉であるが、迫力に欠けるのである。
 
「私なんかは……まぁ、古参ですので。龍驤さんや初霜さんを見てますから、ちょっと危ないんですよねー、ははははー」

 青葉は朗らかに笑うが、聞いている鈴谷からすれば笑えない。鈴谷の双眸の先では、その青葉の口から出た初霜が雪風と模擬戦闘を行っているのだ。体つきこそ幼く、見た目どおり非力ではあるが寸止めルールでやっている急所狙いは非常にえげつない。親友同士の二人が、喉、わきの下、水月、鼻の下、と貫手、掌打、拳で打ち込むのである。
 見目麗しい少女達の汗水を流す運動としては、物騒に過ぎた。
 
 ただ、軽巡や駆逐と重巡や戦艦の役目は違う。軽巡達が切り込み、護衛部隊なら、重巡達は指揮艦部隊だ。小回りが効かない分一発も無駄にしない為砲術理論を学び、その間に戦術を学ぶ。更に鈴谷達航空巡洋艦娘達は空母的な戦闘機運用も覚え、鈴谷達程ではないが他の重巡艦娘達も水上戦闘機の持ち帰った情報をどう取り扱うか多元的に考える為、古代の戦術指南書まで目を通さなければならない。過去の書物の中により良き未来を得る為の知恵があるからだ。
 つまり、局地的に一点投下されるのが軽巡達で、戦局を面的に見なければならないのが重巡達である。実際、鈴谷の姉妹で未だ地面に伏せている神戸生まれのお嬢様熊野は戦術と砲撃なら大の得意であるし、妹に水を飲ませて貰っている利根は龍驤鳳翔に次ぐ索敵上手だ。
 艦娘といっても一括りではなく、それぞれ向き不向きがある。
 
 ちなみに、鈴谷が見ていた初霜と雪風の模擬戦は、駆逐艦娘達の中で見ればレベルの高い物ではない。神通をして、危ない、見ていてはらはらする、兎に角混ざりた
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