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執務室の新人提督
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れない彼女の現在の身は、通常の人間程度でしかない。それは青葉も同じであるが、そうなると単純な事で勝敗が決して来る。

 体重差だ。

 青葉の体格は平均的な女性のそれであり、初霜の体格は幼い少女のそれだ。みたまま、そのままが如実に結果として出てしまう。ゆえに、初霜はよけた。受ける事自体が負けへと続くからだ。
 身を翻す勢いを利用し、初霜は伸びきった青葉の腕を掴んで極め様とした。が、青葉は腕を曲げて肘を初霜の頬に叩き込もうとする。させじ、と初霜は身を翻して青葉から距離をとった。
 
 再び、ソロモンの狼と坊の岬の小さな勇者がにらみ合う。
 二人は息も乱さぬ互いを見て、何故こうなったのだと同時に考えた。だから、二人は口を開いて声を上げる。

「私は……青葉は! あの人と一緒に笑いたい! あの部屋だけじゃなくて、もっと、もっとたくさん、色んな場所で、笑って……! あの人の笑顔が見たい!」
「私は……私は、あの人を守りたい。扉を見るたび、辛そうなあの人の心を、間違っていたとしても守りたい」
 
 言葉は終わり、青葉は駆けた。距離を一瞬で詰め、足が床から離れた瞬間から放たれた拳が初霜を穿とうと唸りを上げる。威力が高い事で知られるジョルトブローだ。ただ、そのパンチは隙が多い事でも知られている。初霜は放たれた拳を身を屈めてやり過ごし、がら空きにあった青葉の脇の下に掌打を打ち込もうとし――青葉に組み付かれた。
 
「青葉……さんっ!」
「あんなテレホンパンチ、本気では打ちませんよ」

 懐におびき出すための餌であったらしい。青葉はこのまま初霜を締め落とそうと顎の下に腕を入れようとしたが、初霜は空いている足を使って全力で壁を蹴った。
 
「こ、この……!」

 バランスを崩した二人は転倒し、初霜は青葉の腕から逃げようとする。が、それを逃がすような青葉ではない。逃すまいとする青葉と、逃げようとする初霜は組み合ったまま転がり、もどかしさから叫んだ。
 
「初霜さんだって! 提督と一緒にどこかに行きたいでしょう! もっと色んな場所で笑いあいたいでしょう!? 貴方だけじゃない、皆そう思ってる! 思っていても、みんな動かないから! 私が動くしかなかった! みんなの意識を確かめた上で動けば、提督だって出てきます!」
「それは!」
「それはなんだと言うんですか……? わがままだとしても押し通します! あの人は居るんです! そこに! もう笑ってもらうだけじゃないんです! 私達が、あの人を笑わせて上げられるんです!」
「青葉さんは! あなたは……!」

 悲痛な青葉の声に、初霜はそれ以上の悲痛さを秘めた叫びを上げた。
 
「突然に与えられたのなら、突然に奪われると思わなかったのですか!!」

 青葉は腕から力を抜き、自身の下で鋭
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