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執務室の新人提督
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 華の二水戦が誇る最強の旗艦、神通だ。
 彼女はなにやら驚いた様子で、おずおずと提督にお辞儀した後、
 
 「ど、どうして、私だと分かったんでしょうか?」

 そう提督に聞いた。提督にすれば、何でもなにも、おそらく廊下ですれ違っただろう山城の小さな悲鳴で理解しただけの事だ。まぁ、そのまま執務室を素通りしてしまう可能性もあったが、控えめなノックが神通らし過ぎて間違えようも無かったのである。
 
「神通さんは、何かと分かりやすい、からかなぁー……」
「そ、そんな」

 適当な提督の言葉に、頬を朱に染めて俯く姿は、可憐な乙女そのままだ。
 だがしかし、しつこいようだが……神通と呼ばれる艦娘は、華の二水戦の歴代旗艦の中でも最強と称される猛者である。
 
 ――らしいんだけどなぁ。

 執務室に篭っている提督には、神通の作戦行動中の姿など知りえない情報であるから、どうにも今眼前にある乙女然とした、羽黒に勝るとも劣らない"お嫁さんにしたい艦娘的姿"と、例えば、二水戦旗艦絶対参加訓練等に参加した二水戦最後の旗艦である初霜曰くの、殊戦闘や戦術行動となると次元が違う、という言葉が提督の中で結びつかない。
 
「あぁ、そういえば山城さんは?」
「そ、それも分かるんですか……? え、えっと、廊下ですれ違ったあと、すぐ別れましたから……また昔みたいに、一緒に訓練できたら、嬉しいんですけれど……」

 別れたというよりは、退いたの方が正しい。そうは思っても、指摘しない優しさが提督にはあった。あとトラウマっぽいから止めてあげような? と言うだけの強さは提督には無かった。
 
「んで……神通さんはどうしてここに?」

 基本、執務室から出ることが無い提督と顔をあわせるには、会いたいと思った方から執務室に行くしかない。休憩時間中や、就寝前の暇な時間となればそれなりの艦娘達が提督に会いに来る。
 しかし、今はまだ仕事中の時間だ。慣れと仕事量の少なさで手持ち無沙汰になってはいるが、本来なら、提督はまだ机にかじりついて書類と格闘中の筈である。

 ――なんというか、模範的というか、委員長的な神通さんが顔を出すような時間じゃないんだよねぇー。

 提督の疑問に答えようと、神通は顔を上げてか細い声で提督の耳を打った。
 
「その……初霜さんも出られたと聞いたので、お仕事で困っていないかと……」
「あー、まぁ、その、ありがたいのだけれどね。昼までに終わらせるべき仕事は、全部おわってるんだなぁ、これが」
「あ、そ、そうです、か……すいません」

 出来た娘であるが、神通は本日非番である。事実上の待機扱いとは言え、軽巡の層は厚いのだから、休めるときには休むべきではないだろうか。
 提督がそんな感じの事を口にしようした時、彼は
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