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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十八話 収束
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ミュッケンベルガーは第二次ティアマト会戦において名誉の戦死を遂げた。私はどんな死を迎えるのか。願わくば父の前で顔を俯ける様な死は遂げたくないものだ……。
「憲兵隊の協力が必要になります」
「うむ。軍務尚書には私から話をする。これを放置すれば軍だけでなく国家にも悪影響をもたらす。賛成してくれるだろう」

エーレンベルクは食えない男だが、決して無能ではない。理を尽くして話せば必ず判ってくれるはずだ。
「捜査において、注意するべき点は」
「いかなる意味でも手加減せずにやってくれ。これを機に軍の膿を出し切ってしまおう」



「私にそのような策に乗れと言うのか」
「策も何も、これが事実です」
「シュタインホフはどうする。あの男は真実を知っているぞ。私と軍務尚書が今回の事件に驚いた事を知っている。シュタインホフだけではない、宮中の廷臣、貴族たちも知っている」
「彼らがサイオキシン麻薬の密売組織に関係していないと誰がいえます?」
「!!」

「敵を欺くためにも尚書閣下と司令長官閣下は演技をなされたのです。違いますか、閣下。この事を話せば皇帝陛下を初め宮中の廷臣、貴族たちも軍には不信を抱いても、お二人がいらっしゃれば大丈夫だと安心されるでしょう。シュタインホフ元帥も必要以上に軍の威信が低下するのは避けたいはず、表立っては非難は出来ないはずです。なによりシュタインホフ元帥は今回何もしていません。お二人に対して何も言えないはずです」
「……軍務尚書が話しに乗るか?」
「乗ります。既にケスラー中佐がその方向で説得しております」
 
 俺とケスラーが一番苦慮したのは帝国軍上層部が司令部要員を全員逮捕(俺を除く)という事実を受け入れられるかどうかだった。既にサイオキシン麻薬を押収し、輸送関係者を逮捕、補給基地まで捜査しているのだ。これ以上となると隠蔽工作に走りかねない。その場合危険なのは、犯罪者も捜査員もまとめて処分(口封じ)という事になりかねないことだった。彼らの自尊心を満足させる方向で事件を収束させる。それが必要だった。

「何が望みだ」
「は?」
「何が望みかと聞いている。出世か、地位か」
「どちらもいりません」
「いらぬと?」

「はい。先日中尉から大尉に昇進しています。充分です。第359遊撃部隊をどうするか決めてください。存続させるのであれば後任者の選定をお願いします」
「……」
「それと、一つお願いが」
「何だ、やはり有るのではないか」

「小官のことでは有りません。閣下、責任を何も取らぬというわけには行かないと思います。ですので今後一年間俸給を返上して欲しいのです」
「俸給の返上か」
「はい。返上した俸給をサイオキシン麻薬の被害者への治療に当てて欲しいのです」

「……いいだろう。……卿は、いや
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