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Element Magic Trinity
貴方の人生に幸あれと
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「…という訳でして」
「つまりこの中にいるバケモンを倒せばいいんだな?」
「その通りです。話が早くて助かります、魔導士様」

街外れにある白蛇の社。古ぼけた小さな建物の前で、2人の男性が何やら話し込んでいた。
1人は少々白髪が目立ち始めた黒髪の男性。年はざっと見て40代後半くらいだろうか。特にこれといった特徴のない容姿に、良くも悪くも目立たない地味な服装。だがこの街で彼を知らない者はまずいないというある種の矛盾めいた男―――町長たるフィガ・フォルガ。
そしてもう1人。粗い黒髪を背中まで伸ばし、眉や鼻、口元にはネジを思わせるピアス。右肩に渦を巻くような紋章を刻み、黒一色の服に身を包んだ強面の青年。
年齢は明らかにフィガの方が上なのだが、態度は真逆だ。これから仕事を頼もうというのに偉そうにするのもおかしな話なので、当然といえば当然なのだが。

「で、そのバケモンってのはどんな奴だ」
「そりゃあもう凶悪な奴です。近づいてくる者は皆敵と見做し、容赦なく噛み付いては毒を仕込む。更に妙な術でも使っているのか、私の息子が誑かされてしまいましてね。お恥ずかしい話です」
「テメエのガキなんざどうでもいい。そんだけなら大した奴じゃねえな」
「いえいえ、奴の恐ろしさは妙な術でも毒でもありません」

何も知らない魔導士に、これでもかと言わんばかりに大袈裟にした話を吹き込む。今ここにその“誑かされた息子”がいれば怒りを露わにして爆発を引き起こしていただろうが、彼は昨日から戻って来ていない。
怪訝そうな表情の魔導士はフィガの話に違和感の欠片も覚えない。その様子に内心安堵しつつ、表面上は“バケモノに怯えながらも街の為に動く町長”を演じ続ける。

「髪です」
「髪だあ?」
「ええ、毒々しい色の長い髪。毛の1本1本が蛇になる上に切っても切っても死にやしない、どこに逃げても追いかけてくる…全く、気味の悪い娘です」
「蛇になる髪、ねえ……」

顎に手を当て何やら考える姿に、密かに笑う。どうやら信じ込んだようだ。これであのバケモノは社からも街からも消える。そうなればバケモノを追い払おうと動いた自分は立派だと讃えられ、その時は目を覚ました息子も戻ってくるだろう。町民達の前であれほどまでに言い切った手前戻りにくいかもしれないが、そこをサポートすれば更に評判は上々だ。
何年もかけて築き上げた今の地位を、あんなバケモノに崩されてたまるか。こちらにまで牙を剥くなら、その牙をへし折ってやる―――――。







「そんだけか?」
「は…」
「だから、髪が蛇になるだけかって聞いてんだよ」

その余裕を粉々に打ち砕かれた、気がした。赤い目を向ける彼の言葉を、じっくり時間をかけて理解する。
それだけなのかと彼は言った。ただ髪が蛇へと変わ
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