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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
On the stage
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速度で薙ぎ払われた剣身は、その上に乗っていた矮躯を砲弾のように吹き飛ばした。

大気を薄いゼリーのように引き裂いて、音さえも置き去りにした小柄なアバターは一直線に巨人へと突き進む。

狂怒は笑っていた。

白い壁がそびえる。その絶望的なまでの防御力を知っていて、それでもなお、屈することなく高らかに嗤っていた。

「あぁあぁあぁ!最ッ高にサイコーだよ!仲間(クソッタレ)ども!!」

その声に気付いたか、はたまた最初から信頼していたのか、マークUのタゲを取っていたキリトとミナが即座に離脱する。

キリトのほうはほとんど外傷は見受けられないが、ミナのほうはアバターのあちこちに小さなダメージエフェクトを煌めかせている。とくに酷いのは右二の腕の裂傷で、真紅のパーティクルが彼女の動きに合わせて零れ落ちていく。だがミナは確かな足取りで戦場を後退していった。目配せのようにこちらを見たのは気のせいだっただろうか。

キリトは、スッ飛んできた少年に驚きもせず、交差するように離脱していく。

その無言は、一匹の鬼の口角をさらに吊り上げた。

レンには、もう武器と言えるモノはない。彼の得物である饕餮(とうてつ)は、《災禍》の依代になるにあたって壊れてしまった。

狂怒には、もう技と呼べるモノはできない。彼の心意技――――《天墜》は太陽光を心意によって捻じ曲げるといった特性上、夜である今は満足のいく威力は期待できない。

だが。

―――まだ、残ったモノぁある!!

その思考がトリガーになったように。

じわり、と。

アバターの素体――――リアルな皮膚に似せた仮想体そのものが、黒く染まっていく。

そう。

―――得物ぁ壊れても!技ぁ撃てなくても!一度成った《災禍》は残ってるよなぁ!?

《冥王》レンは、例え未完成であれ、不完全であれ、不充分であって中途半端であれ、それでも一度、《災禍の鎧》と成った。

その後、《核》である初代をフェイバルに叩き込んだのだが、それで跡形もなく綺麗に消えるほどに《災禍》は甘い存在ではない。

その欠片は、その痕は、後遺症のように残っているものなのだ。

―――ソレを《欠片》である俺が利用するのぁ、えれぇ皮肉なモンだがなぁ。

自嘲のようにごちながら、狂怒は黒腕を振るう。

今度こそ、全てを終わらせんがために。
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