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同窓会
6部分:第六章
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第六章

「それがわかったの。最初のこととか考えていって」
「俺はそこまで考えてなかったけれど」
「御免なさいね。本当に三年間」
「いいよ」
 また言葉を返す一圭だった。
「別にさ。それよりも」
「それよりも?」
「中に戻ろう」
 彼はこう言うだけだった。
「中にね。お店の中にね」
「お店の中に」
「寒いしね。今は」
 少し困ったような笑顔での言葉だった。
「それにさ。過ぎたことはね」
「過ぎたことは」
「もういいよ」
 いいとさえ言うのだった。
「いいよ。近藤さんだけじゃなくて僕も近藤さん嫌って言い返していたし」
「けれどそれは私が」
「お互い様だよ。お互いに問題があったから喧嘩するんじゃない」
 人と人との喧嘩はそういうものだと。一圭はそう考えているのだった。
 だからこその言葉だった。そして彼はさらに。こう彼女に告げた。
「いいじゃない、もうね」
「有り難う」
 俯いた顔でその言葉を受けた景子だった。
「そう言ってくれて」
「だから戻ろう」
 これまでよりも優しい言葉だった。
「お店の中にね」
「うん、じゃあね」
 こうして二人で店の中に戻った。流石に一緒にいるとかつてのクラスメイト達からまた喧嘩をしたのだと思われるので別々に皆の場所に戻った。一圭が自分の席に戻るとすぐに皆が笑いながら彼に対して言ってきたのであった。
「遅かったな」
「長かったな、おい」
「御免、ちょっとね」
 笑ってこう皆に返す。景子とのことはあえて言わない。
「携帯電話探してて」
「落としたのかよ」
「いや、何処に入れたのかわからなくなったんだ」
 こう言って誤魔化すのだった。
「それでだったんだ」
「そうか、それでか」
「それで見つかったのかよ」
「うん、あったよ」
 穏やかな声で皆に答えた。
「ここにね。胸ポケットにね」
「ああ、そこな」
「酔ってると何処に入れたか忘れるんだよな」
「そんなに酔ってないけれどね」
 こうも言って誤魔化すのであった。
「まだ」
「いや、御前結構飲んでるからな」
「そうなっても当然だろ」
 周りは笑って彼の今の言葉に突っ込みを入れた。
「そんだけ焼酎飲んでたらな」
「もう瓶一本分は飲んでるぜ、おい」
「そんなに飲んでるかな」
 これは本当に自覚していないことだった。もうそこまで飲んだつもりはなかったのだ。自分ではこれからが中盤といったところだったからだ。
「俺、そんなに」
「飲んでるって」
「酒豪もいいところだよ」
 周りの方が客観的だった。酒のことに関しては。
 しかし客観的だからといって止めるわけではなかった。むしろさらに煽って彼のコップにその焼酎を注いでいくのであった。当然飲ませる為にだ。
「さあ、だからな」

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