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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
30話 無音の追跡者
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から抜け落ちたかと思うとそのまま直下に滴り、石畳だけをしとどに濡らして沁み込んでゆく。屋根に飛び乗ってから絶えず視界の端に存在し続けていた《隠れ率》も90パーセントを下回ることはなく、荷から布と綱を取り払う様を三軒離れた路地から見つめること数分。先程訪れた際は無人だったはずの作業場から数人の男がゴンドラの傍に歩み寄ってくる。卸倉庫と同様に何かを話し合うと、積荷であった木箱を今度は作業場に運び始めたではないか。
 しかし、作業場は空き地をそのまま流用したような立地であり、建物の影に隠れていては向こう側で何が行われているのかが確認できない。やむなく、隠れていた建物の小窓の縁やベランダの柵を登攀して再び屋根の上に登り、様子を見ることとする。膝立ちになって気配を消していると、男達は口を動かし始めた。


「しかし、今回も何とか《納期》には間に合いそうだな」
「ああ、こんなふうに商人どもが持ってる木箱さえ使えば、いちいち箱なんか作らずに済むってのによ」
「まあ、今回はいきなりの追加発注だったからなぁ。それにしてもだ。こんなガラクタを高値で買い取ってくれるなんざ、どこの物好きかね?」
「そんなこと知るかよ。どんなに頭がイカれた野郎でも、金払いだけは一丁前らしいからな。お気に召すままにご用意させていただくさ」


 話を聞く限りは木箱を何者かに売っているようだが、これだけではとても情報には為り得まい。

 ………などと考えていると、システムログが更新されて、コルネリオに報告するようにと指示が出される。下で木箱を運び終えた男は再びゴンドラに乗り込んで去ってしまう。作業場にいたであろう男達は常駐しているわけではないらしく、仕事が終わるや否や、「帰って寝る」などと嘯きつつ笑い声を響かせながら太い街路へと抜けていった。
 念のために搬送された木箱を確認してみると、それぞれ規格は異なれども、それでも変哲の無い木箱の集まりに過ぎなかった。この場で得られる情報は本当に無くなってしまったわけだ。
 殊更この場に留まる理由もなくなったので、俺もヒヨリ達と合流する………

――――その前に、近くの食堂にでも寄ることにした。
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