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彼に似た星空
11.小川攻防戦。そして犯罪者・鈴谷。
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 朝食を食べ終わると、私は霧島と二人で宿の周囲を散策してみた。鈴谷はまだ眠いらしく、朝食も抜き、部屋でひたすら眠っている。

「ごめ〜ん鈴谷はパス。昨日痛めたケツも労りたいしね〜……クカー……」

 彼女の最後のセリフがこれだった。どうやら昨日は相当遅くまで起きていたようだ。キリが無いので、ケツの話にはもう二度と触れないことにした。

 青々とした田んぼの間を抜け、小さな林に入った。蝉の声が響いているが、決してうるさくはない。小川が流れ、そのそばに来ると心持ち涼しく感じる。

「霧島、暑いから川に入るヨー」
「ぇえ〜?! お姉様ちょっとはしゃぎ過ぎでは……?」

 私は履いている靴を脱ぎ、素足になって小川に入った。小川はとても水が澄んでいてキレイだ。水温も冷たくて気持ちいい。

「ほ、ホントに入っちゃったんですか?!」

 うろたえている霧島を見て、なんだか急にいたずらしたくなってきた。私は水を両手ですくうと、それを勢い良く霧島にかけた。

「ほりゃー! 覚悟するネ霧島ー!」
「あぶぉッ?! お、お姉様?!!」
「ヒャッヒャッヒャッ! 私の三式弾の前では霧島も轟沈デース!!」
「お、お姉様……ならばッ……!!」

 どうも霧島に火をつけてしまったらしい。霧島も履いている靴を脱いで、冷たい水に『ひああああっ』と悲鳴を上げながら小川に入り、その水を自身の両手ですくい上げると…

「お姉様が三式弾なら…私は徹甲弾です!!」
「うひゃー!! 霧島!!」

 そのまますくい上げた水を私にかけてきた。やられた。あの真面目な霧島がやり返してくることはまったく予想してなかった。私は霧島がかけてきた水を、もろにかぶってしまった。

「き、きりしまぁあ〜……!!」
「ホッホッホッ! この霧島の徹甲弾の前ではお姉様も轟沈ですね!」
「こ、これは負けてられないデース!!」
「私も負けませんよお姉様!!」

 こんなところで霧島との姉妹間戦争が勃発するとは思ってなかった。私も霧島も本気で相手に対してバッシャバッシャと水を掛け合った。バカバカしいほど意味がなく、アホらしいほどにしょぼい骨肉の争いだ。おかげで二人共くたびれる頃には、私たちはずぶ濡れになっていた。

「や、やりますねお姉様……ゼー…ゼー…」
「き、霧島もやるネー…さすが金剛型ネ…ゼハー……ゼハー……」

 フと、霧島と目が合った。霧島はメガネがずれ、髪もずぶ濡れだ。多分私も、霧島と同じくヒドい状態なのだろう。

「ブッ……」
「ぶふっ……お姉様……ぶふふっ……」

 霧島と私は元艦娘だ。あの日はもちろん、それ以外にも何度も生と死の間をくぐり抜けてきた。そんな私達が、恐らくはあの撤退戦の時以上に本気で、互いに水を掛けあっている。そしてその
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