暁 〜小説投稿サイト〜
彼に似た星空
9.おばあちゃんとサラリーマン。あとケツ。
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 フェリーを降りたあと、電車ではなく汽車に乗って数時間。降りた駅からバスに乗ってさらに数時間…一体何回、鈴谷の『ちょっとマジ退屈なんですけど』という人生を舐めきったボヤキを聞いたことだろう。私たちは、やっと提督の故郷に到着した。

 バスを降りた直後の鈴谷のセリフ『金剛さん金剛さん…鈴谷座り過ぎでケツがちょっと痛いんだけど…金剛さん大丈夫?』が、ここまでの道のりの長さを物語っていた。彼女なりの気遣いのつもりだったのだろうが、なんとなく答えるのに勇気が必要だった。

 到着したバス停…というより、これはバスセンターというべきか…は意外と立派だった。この地域の路線バスがここに集結しているようで、何台かのバスが停車していた。小さな建物が併設されており、その中でバスのチケットを買ったり、バスの発車時刻まで待機したり出来るようだ。私たちはとりあえず併設された建物の中に入った。

 建物内にいる人間は少ない。暇そうにあくびをしている係員のおっちゃんが一人と、ベンチに腰掛けて年代物のテレビを眠そうな顔で眺めるおばあちゃんが1人。あとはこの場所に似つかわしくない、仕立てのいいスーツを着たサラリーマン風の男が一人だった。サラリーマンはスマートフォンをいじくっている。

「人少ないネー…」
「まぁ仕方ないじゃん? だってかなりの田舎っしょココ」
「とりあえず私はあの係員さんから旅館とは花火大会のこととか聞いてきますねお姉様」
「鈴谷も情報仕入れてみよう。あそこのおばあちゃんから色々聞いてみるね!」

 霧島と鈴谷はそういうと、霧島は係員のおっちゃんの元にツカツカと歩いて行き、鈴谷は意気揚々とおばあちゃんの元に歩いて行った。私はなんとなくそんな気になれず、そんな二人から少し距離を離し、近くにある観光案内のパンフレットを眺めた。提督が言っていた花火大会のパンフレットが何冊か並んでいた。日程は明日の夜のようだ。

 突然、建物内に『あらッ?! おねえちゃん、艦娘やったとね?!』という大きな声が聞こえた。声がした方を見ると、鈴谷がさっきのおばあちゃんに圧倒されていた。

「そうだよ〜!! 鈴谷、つい最近まで海の上で戦ってたんだから〜!! ふっふ〜ん♪」
「そがいなことはよ言わんね!! おばあちゃんたち艦娘なんて見たことなかでわからんかったが!!」
「ちょ…おばあちゃん…なまってるし早すぎて何言ってるかマジわかんないんですけど」
「ここん人間じゃなかからわからんくて当たり前や! あはははははは!!!」
「おばあちゃんちょっとケツ叩かないで!! マジ痛いし!!」

 おばあちゃんと相対した鈴谷は、おばあちゃんパワーに圧倒され、今はケツを叩かれている。恐らくはおばあちゃんなりの鈴谷へのコミュニケーションの一環だとは思うのだが、さっき『痛い』と悲鳴
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