暁 〜小説投稿サイト〜
101番目の舶ィ語
第四部。変わる日常
プロローグ。『終わらない千夜一夜』
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じなの!」

得意げに話すスナオ。こんな状況じゃなければ微笑んでいただろう。
それが出来ない。

「この街の場合、単に長年引き籠りをしていた女の子がいて、その子の事を両親が周りの人に話して『うちの娘は臆病者ですぐに押入れの中に引き籠る子だったんだけど、外の世界に出れるようになった』と話しただけで。それ以来、彼女は実際はちょっと臆病者なだけの普通の女の子、そんな都市伝説のオバケはいなかったんだー、って噂が広がったという感じよっ」

「そして、今その人はどうなっているかと言えば、すでに、普通に学校に行って、普通の生活を送っている。外の世界に出て活躍されている______そこまで語って、対抗神話は完成するんですよ、スナオさん」

「はーい、マスターっ」

理亜が引き継ぎの言葉を言ったのを聞いた瞬間。違和感しか感じなかった。
理亜はそういう都市伝説にまるで詳しくない。知っていても誰もが小耳に挟んだレベルしか解らない。
都市伝説にあまり興味はない、そんな風に勝手に思い込んでいた。
だから、理亜が『対抗神話』を語るのを聞いて、違和感を感じたし、それを当たり前のように語ってほしくはなかった。

「そういうのもあるのね……」

「ああ、『隙間女』のロアを消し去る方法だ、って俺はキリカに聞いたよ」

音央の呟きに答えながら俺はその方法がどんなものだったのかを思い出す。
噂が流れてロアが発生した場合、その物語を弱める手段として噂を流してロアを弱体化させてしまう、というもの。
その方法が、『対抗神話』だと言っていた。
いつだかの放課後の特別講習を思い出す。

『こういう噂が流れるとね。『隙間女はいなかったんだ、なんだー』ってみんなの間に広がりまくって。結果……』

「『隙間女』のロアは消えて無くなる」

キリカがちょっぴり怖そうに、眉を下げながら教えてくれたのを思い出す。
純粋なロアであるキリカにしてみると、ロアが消える話はやはり恐怖を感じたのだろう。

「そんな感じだったか?」

「はい、その通りです。多少は知っているようなので何よりです。さて______」

俺の反応を見て把握すると、理亜は一之江を睨みつけた。
一之江は負けずに理亜を睨み返すと。真剣に理亜が持つロアの噂を語り始めた。

「『千夜一夜(シェラザード)』の語る『夜話(やわ)』______それが全てのロアにとっての『対抗神話』になる、という噂があるのです」

いつもは飄々としている、どんなシリアスなシーンでもおふざけを忘れない一之江。
そんな彼女が、今はただただシリアスな表情と声で理亜を見つめている。
______まるで。

「はい。それが私の能力の一つ『千の夜話(アルフ・ライラ)』です」

まるで、目を離した瞬間に
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