8.提督が怒った理由
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「何があっても、絶対に口を挟まないでくれよ」
第二艦隊が到着したとの報告を受けた提督は、秘書艦の私にこう言うと、第二艦隊の面々が報告に来るのを待った。
さきほど第二艦隊が、とある敵拠点海域を制圧した。以前から幾度となくアタックしては返り討ちにあっていた難攻不落の拠点海域だ。私も姉妹たちを率いて何度かチャレンジしたが、いずれも制圧することは叶わなかった。それを今日、第二艦隊がやってのけた。率いていたのは、鎮守府内随一の武闘派にして、先日重雷装巡洋艦への改造がなされた木曾だ。
実は今回、ちょっとした問題があった。旗艦である木曾が制圧作戦中に敵艦の攻撃を受けて中破した。提督はその段階で第二艦隊に撤退を指示したが、それを旗艦である木曾が拒否した。
「提督、心配はいらない。今日こそはお前に最高の勝利をやるから待っててくれ」
この言葉を最後に、木曾からの通信は途絶えた。提督はその後何度か木曾に通信を送ったが、木曾はどうやら無線のチャンネルをいじったらしく、まったく繋がらない。仕方なく、同じく第二艦隊として同行していた榛名に無線を繋ぎ、なんとか状況を知ることが出来た。
木曾が提督の指示を無視して独断で進軍した結果、木曾は制圧戦の最後で敵の攻撃を受け、大破判定。同じく榛名も大破判定。赤城と鳳翔と伊勢が中破判定、夕立は小破判定だった。
提督は榛名からの作戦完了の報告を受けるまでの間、ずっと自分の席で腕を組み、無線機を睨みつけていた。傍から見れば、恐らく命令を無視した木曾への怒りを募らせている真っ最中だと皆が思ったことだろう。私もまた、そう思った一人だ。
『提督、作戦完了しました。これより第二艦隊帰投します』
「ん。了解した。鎮守府についたら入渠前に執務室に来るよう、全員に伝えてくれ」
榛名から作戦完了の報告を受けた後、かぶっていた帽子を脱いで自身の髪を掻き上げると、ふぅーっと深いため息をついていた。その後、脱いだ帽子を深くかぶり直した。おかげで彼の表情が見えなくなった。
「テートク」
「ん? どうした?」
「とりあえずみんな無事でよかったネー」
「そうだなぁ」
「攻略困難な海域を制圧できたんだシ、そんなに木曾を叱らなくてもいいと思うヨー」
「んー…」
提督はいまいちハッキリしない返事をした後、椅子の背もたれを倒し、思いっきりそれにもたれて天井を見上げた。帽子のせいで彼の目が見えないためか、中々表情が読み取れない。
それから一時間ほどして、第二艦隊が鎮守府に帰投した。事前に榛名から伝わっていたのだろう。帰投直後にそのまま執務室に直行するという知らせを受けた。
「金剛」
「ハイ?」
「何があっても、絶対に口を挟まないでくれよ」
「oh…テートク、やっぱり木曾を叱るんデ
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