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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十一話 伝書鳩
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。たかが一大尉のことなど気にも留めていないだろう。

エーレンベルクとミュッケンベルガーにとって今回の件はシュタインホフの失態でしかない。ハウプト中将の口止めはあくまで口止めでしかないのだろう。少なくとも今すぐ殺し屋が来るようなことは無いはずだ。但し前線勤務は仕方ないだろうし、戦死を望まれるのも止むを得ない。後は俺がどう凌ぐかだ。

 翌日、俺はいつもより早めに仕事場に出た。ディーケン少将は既に机に座っていた。挨拶をすると相談したい事があると持ちかけた。ディーケン少将とハウプト中将が繋がっているならことわらないはずだ。俺の動向を調べるのはディーケン少将の仕事だろう。案の定、奥の部屋で話そうといってきた。

「軍を辞めようと思っているのですが」
俺はそう言うと、退職願いをディーケン少将の前に出した。
「辞めるのかね、大尉。昇進したばかりだろう」

「それを思うと心苦しいのではありますが、小官は軍人に向いていないようです。先日のイゼルローンでも負傷者の悲惨さに吐いてばかりで何も出来ませんでした」
「初陣なのだ。仕方なかろう」
「ですが、いつか失敗するのではと心配で夜も眠れません」
「それで辞めたいと」
「はい」
 
 俺が人事局へ退職願を提出しようと思っている、というとディーケン少将は自分がハウプト中将に相談してみようといってきた。俺は退職願いをディーケン少将に渡し、お願いしますと頭を下げた。ちゃんと伝えてくれよ、伝書鳩クン。こちらには敵対する意思は無い、今回の件は不運な事故、シュタインホフが阿呆なだけだと。なんなら退職願いを受理してくれてもかまわないってな。


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