4.羊羹
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
私が建造されたこの鎮守府は、また建築されて間もないところだった。話を聞けば、提督はまだ着任して間もない、艦隊指揮を取った経験の無い新人提督。駆逐艦の五月雨と共に出来上がったばかりのこの鎮守府に着任し、初めての艦娘の建造で、
『妖精さんのノリで誰が建造されるか分からんのなら、妖精さんをノせればいい』
というわけのわからない理屈の元、鎮守府にあるありったけの資材をすべて妖精さんに渡してしまうという暴挙をやらかした。その結果、私が建造された。
「そんなこと、よく五月雨が許しましたネー…」
「いや、五月雨は必死に止めてたけどね。でもまぁそのおかげで金剛が来てくれたし」
結果、発足して未だ間もないこの鎮守府は、資材が底をついたことで機能を停止した。
「私はがんばって資材を集めますから、金剛さんは秘書艦になって提督を見張っててください!」
「わかったネー! 資材の方は頼むヨ五月雨ー!!」
こんなやりとりをしたあと、五月雨は資材調達に奔走した。それが功を奏し、鎮守府に少しずつ資材が貯まり、仲間も増えていった。あの時ほど五月雨を頼もしいと思ったことはない。
私はというと、五月雨との約束もあり、秘書艦として提督のデスクワークのお手伝いをすることになった。どのみち資材不足の状態では私は出撃することが出来ないという理由もある。
「テートク〜。今日の分の書類整理終わったヨ〜」
「ぉお〜お疲れ様〜。いつも手伝ってもらってすまん」
「ワタシはテートクの秘書艦なんだから当たり前デス! 五月雨とも約束しまシタ!!」
「約束って言ってもあれだろ? おれがアホなことしないように見張っとけとか、そんな感じだろ?」
この提督、顔はわりかしポヤンとしているのにけっこう鋭い……この時、私は図星を突かれたことで、内心では口から心臓が飛び出るほど動揺していた。
「の、ノーゥ…そんなことは…ない…デース…」
「冷や汗をだらだら流しながら否定されても説得力ないぞこんごーう。こっちを見るんだッ」
「オーウ…ホーリィー・シィーット…」
「こらっ。女の子がそんなスラング使っちゃいけませんっ」
「ソーリィねテートクぅ…確かに図星デース…」
「だろ〜?」
提督はそう言うと得意そうな笑みを浮かべ立ち上がり、席を離れて鼻歌を歌いながら緑茶を淹れてくれた。私としては紅茶の方がうれしいのだが…
「テートクー、ワタシそろそろ紅茶が飲みたいネー…」
「毎度同じ返答で申し訳ないが、それは今建造中の酒保ができるまでの我慢だな。とりあえずもうしばらくは、この緑茶ってやつで勘弁してくれぇ」
「仕方ないネー…ナッスィングなスリーブはノーシェイクって言うし〜…」
「なんだそりゃ?“無い袖は触れない”って言いたいの?」
「そうデース
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ