暁 〜小説投稿サイト〜
Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四三話 帰想
[2/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
。」
「………」
ぽつり、ぽつりと語りだす忠亮。篁 唯依はその独白に耳を傾ける。
その自嘲気な眼差し、見ているだけで胸を締め上げられるような錯覚を覚える痛々しいものだ。
「でもな、いつの日か気付いてしまったんだ。この世に公正公平な正義何ぞ無い、俺のなりたい正義の味方は俺の求める正義の体現者でしかない―――とな。」
人によって正義とは形を変える、他人という人間は列記とした別人であり異なる思考回路と立場を持つ異人なのだ。
それを真実に理解し、共有する事何ぞ出来はしない―――人は真に分かり合えることはない。
分かり合っていると思っているのは、そう思い込んでいるだけなのだ。
かつて彼が口にした言葉の根源を垣間見る。
「忠亮さんの求めた正義は……どんなものだったんですか?」
「ふん……禄でもない物さ、俺は大切な誰かを窮地から救いたい、守りたい。そんな分かり易い正義を求めて居たのさ。」
「それは―――」
普通の事では無いだろうか、唯依の喉から出かかった問い。
だがしかし、それを察知した忠亮はただ首を左右に振り、それを否定する。
「いいか唯依、誰かを守りたいという願いは……その守りたい誰かが窮地に立たねば満たされる事のない渇望なんだよ。
言い換えればそれは、自身の大切な存在の危機を願う破滅の願望だ。……そんな疫病神、居なけばいないほうがいい。」
正義の味方には倒すべき悪が必要だ。少し考えを巡らせれば子供でも分かる理屈だった。
「剣道の先生が言っていた、武とは戈を止める物だと。だから俺は一心に武を磨いた―――軈ていつか、大切な誰かを守れる武人に……正義の味方になるんだと。
だけど、その矛盾に気付いた途端馬鹿らしくなってな。だが、心血注いで此処まで鍛えたそれが無意味だとは思いたく無くてな――――気付けば、斯衛の門を叩いていた。」
忠亮の志願理由を知る。まだ情感が成熟しきっていない時分に自分の今までの苦労が、そもそも根本から禄でもない物だと気付いてしまった時の彼の葛藤は如何ほどなものか。
きっと、自分には分からないだろう。
剣の鍛錬は非常に辛いものだ。
稽古で打ち合えば当然痛いし、怪我も負う。竹刀や木刀を振れば手には肉刺が出来、それが潰れて激痛を伴う。
そして、治癒しきらない内にその肉が剥き出しの手でまた素振りなどを繰り返し肉刺を潰していく。
素足でのすり足の鍛錬は素振りと同じように摩擦で皮が捲れても行い、真冬の氷のような地面の上でも鍛錬を行う。
―――それだけではない、そんな普通の鍛錬だけを繰り返していたのではあんな肉体が出来上がる分けがない。
ただ純真に、そうなりたいからと邁進した文字通り血の滲む努力。だが、その願いがそもそも間違
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ