1.身の振り
[2]次話
あの事件があった後、私が所属していた鎮守府は正式に解体されることになった。私達の鎮守府は、戦力的にさして重要でなかった地区でありながら、戦力はその重要度にあるまじき強大さだったらしい。司令部は以前からその戦力と拠点重要度のいびつなバランスから、鎮守府を解体し、その戦力を他の重要度の高い鎮守府に分散させたかったようだ。その決断が下ったのは、比較的早い時期だった。私の鎮守府の戦力が極めて充実していたのは、他ならぬ提督の手腕のおかげだったのだが、そんな提督がいなくなってから鎮守府解体決定までに要した時間は、それほど長くはかからなかった。
その鎮守府に所属していた私たち艦娘は、当初全員が他の鎮守府に異動となる予定だったが、その後、今後の選択肢として『今後も艦娘として、他の鎮守府で従軍し続けること』と『退役し、解体処分を受け人間として生きること』のどちらかを選択することが特例として許可された。これは、すでに他の鎮守府に追加の戦力を割り振る余裕がなかったこともあるが、私達の提督が生前司令部に常々上申していた故の特例であるというのは、ずいぶん後になってから知ったことだった。確かにあの提督ならそういうことをやりかねないが、本当にそんなことをしていたことに、秘書艦だった私もまったく気が付かなかったのは恥ずかしかった。
艦娘によって選んだ道は様々だった。軍に残る者も大勢いた。大半が『提督の仇をとる』といい、改めて闘志を燃やし、そのまま従軍を決意した子たちだったが、悩んだ挙句に従軍を決意した子や、他にできる事がないから……と従軍を選んだ子もいた。従軍した者たちは各地の鎮守府に散り散りになるという話だったが、鎮守府同士の連絡網も最近では充実している。かつての仲間が集まることも決して難しいことではないだろう。戦力の乏しい地区に優先的に配属されるそうなので、今後はその鎮守府を引っ張っていく立場ということになる。
身近の親しい人を失い、戦う意味を失ってしまった艦娘も大勢いた。それほどまでに、あの事件は私達にとってショッキングだった。退役を選んだ艦娘たちも、海軍の監視はあるが、それぞれ民間の住居が割り振られ、就職の斡旋もされる。しばらくの間金銭的な生活補助もしてくれるようだ。人間としての戸籍も与えられ、普通の人間として遜色のない生活が送れるよう、取り計らってくれるとのことだ。
私と、あの時の第一艦隊に所属していた霧島、鈴谷、青葉の四人は、退役を選んだ。
[2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ