暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
26話 奇蹟を携える者
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 レクステリウムとの遭遇から一時間と数分、火炎ブレスや薙ぎ払いの抵抗があったものの、ティルネルによる鼻筋を狙っての精密射撃を起点に転倒(タンブル)を引き起こし、総攻撃を仕掛けるというループを繰り返し、中ボス扱いですらないにも拘らずの三段構成HPバーは、ようやく最後のバーの半分を切るまでに進捗した。
 ニオの盾から繰り出されるソードスキル――――語弊があるようにも思えるが、れっきとしたソードスキルである――――の瞬間火力と、タンブル後は確実に突進を繰り出すという単調な行動パターンが幸いして、これまでPT全員のHPがイエローゾーンにすら落ち込むことはなかった。とはいえ、ティルネルが居てこそ偶然にも叶った攻略法だ。こちらに有効な手立てが運良く手元にあってくれたことが示唆するように、全ては運任せに運んでいる向きが強いように思える。つまり、何らかの変調によって途端にペースが崩れてしまうことさえ多分にあるという可能性を孕んでいる。余談は許されないだろう。

 そして幾度目かも定かではなくなった突進が大木を薙ぎ倒し、ティルネルが鼻先を目掛けて矢を放つ。もう十分に慣れた動作を機械的にこなすように繰り出された矢はレクステリウムの鼻筋、或いは鼻っ面を穿って、後から続くクーネ達の攻撃で両足にダメージを蓄積させて転倒させ、全員で許す限りのソードスキルで追撃する。これまでと同じルーティンを実行せんと動き出した。しかし、ここに来てレクステリウムの見せたイレギュラー、突進後の荒い息遣いは突如として頭を振るモーションに置き換わり、それによって矢は肩口を僅かに掠めて森の奥へと消えていった。
 それだけではない。これまでは突進の後に必ず存在していた三十秒間の硬直もおよそ五秒程度までに短縮されている。ボスでもないのにHP残量でモーションが変化するなど、想像だに叶わない難敵だはあるが、それを嘆いても始まらない。レクステリウムは口腔から赤熱の輝きをチラチラと漏らす。目標は幾度となく自身を地べたに叩き落としたニオを筆頭にクーネ達を射線に捉えている。しかし、対処出来ないほどのものではない。


「俺が時間を稼ぐ。ヒヨリとティルネルはクーネの指示で行動してくれ」
「うん!」
「了解です!」


 方針を決定し、それぞれの目指す位置へと移動。ヒヨリとティルネルは左右に分かれてクーネの許へ疾走する。ティルネルに至ってはヒヨリのテイムモンスターの筈なのに俺の指示ばかり聞いているが、大丈夫なのだろうか。
 ともあれ、今は現状を整理しよう。予備モーションが終わり、ブレスが放たれるまでの間にニオが盾で殴り付ければ妨害は確実に成功する。しかし、ニオの移動速度では到底間に合わないだろうし、かといってレイの両手槍をアテにしても、硬直から素早い復帰を見せる今のレクステリウム相手には少々博打が過ぎる
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ