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Element Magic Trinity
蛇髪少女は黒装束の手を取った
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いえっ、ザイール様は悪くありません。全て私が悪いのです。皆様からバケモノと恐れられているのを解っているのに、ここを離れない私が…」
「それは違うだろう」

反射的に飛び出たのは強い否定の言葉だった。
寄り道を繰り返した現状だが、結局のところザイールが言いたいのはたった1つだけで、その1つが回り回って巡り巡って伝えられていないのだけれど。
申し訳なさそうな、そしてどこか泣き出しそうな表情のシュランと真っ直ぐに目を合わせて、彼は言う。

「お前はバケモノじゃない。お前が悪なら町民共は救いようのないそれ以上だ。例え世界中の誰もがお前を罵り虐げようと、俺はお前に向けられた罵詈雑言を死ぬまで否定し続ける」

そこに恋愛的感情はない。ライクはあってもラブはない。
男が女を守りたいと思う事の全てが恋慕に繋がる訳ではないし、大切に思えばそれが恋やら愛やらなのかと問われれば答えは否である。大切、なんて言葉で一括りにしたって、人によって意味は大きく変わってくるのだから。
だからこれは、飽くまでも友人としてのもの。間違っていると声を上げたのが男で、その間違いに飲み込まれそうなのが女だというだけ。

「だから、俺を選べ。アイツ等の捻じ曲がった正義感を満たす為に傷つく覚悟があると言うなら、俺の身勝手に背中を預ける覚悟に変えろ」

けれど、だからといって。
2人の間にあるのが、普通と比べると若干歪な友情だけだとしても。特別濃い訳でもない、会えば話すけど自分から連絡を取るほどではない、なんてよくある程度の繋がりだったとしても。

「俺がお前を守ってみせる、なんて大袈裟な約束は柄じゃないが」

その為に本気になってはいけないなんて、誰が決めた訳でもないはずだ。
男が女の為に覚悟を決めるのは、何も色恋沙汰だけではないのだから。





「もう誰にも否定させやしない。お前とお前の居場所を守ると、約束する」










―――その言葉を、あの方は覚えていらっしゃるのでしょうか。
―――ただの口約束、その場限りの嘘だと言われてしまえば…それまで、なのですけれど。
―――けれど、とても嬉しかったのです。嘘だとしても、私はあの言葉を宝物にしたい。

―――口では街の皆様をと言いながら、本当は私を選んでほしかったのかもしれませんね。
―――ザイール様なら…私の声を、ちゃんと聴いてくださると思っていましたから。





―――ええ、ここまでは私の身の上話。序章、といったところでしょうか。
―――ガジル様との出会いを語るには、これを踏まえて聞いて頂く必要がありましたので。
―――御気分を悪くされたのなら申し訳ございません。



―――……そう仰っていただけると幸いです。お気遣い痛み入り
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