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エターナルトラベラー
外伝 クロスアンジュ編
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そこは照明が少ないのか暗く周りを十分に照らしてはいないが、コンソールからの照り返しを光源に含めるともう少し明るい。

色々な機械が立ち並ぶその中心に一人の女性がコンソールを操作していた。

「完成、ね」

無心針に緑色の液体を入れ軽く揺するとチャプリと音を立てる。

注射器のトリガーに指を掛けると首筋に押し当てる。金属の冷たい感触に肌が少し震えた。

いや、それは本当に肌の振るえだっただろうか。

引き金を引こうとした瞬間、彼女の後ろから声が掛けられる。

「それをどうするつもり?」

この場所には似つかないような少女の声だった。

「あなた様は…」

女性にはその彼女の存在が何であるか分ったらしい。

「そんなもの(LiNKER)を投与したらどうなるか、分らない君じゃないでしょう?」

「ええ。だからこそ、よ。今の地上は人間が生きるには過酷過ぎる。だったら遺伝子の方を改造するしかないじゃない」

「まあね。でももうちょっと待って」

「あなたは人類に全滅しろって言うのっ!?」

その言葉に少女はふるふると首をふった。

「さっき皆で話し合ってね。わたし達でどうにかしてみようって事になったよ」

「え?」

「アウラ。君には特等席を用意してあげる。わたし達の最後のライヴ、特等席で見て行って」

少女は強引に女性の手を取り研究室から連れ出した。

一瞬の内に彼女の視界が切り替わる。いつの間にかどこか通路のような所に彼女は立っていた。

暗く狭い通路を抜けると甲板に出る。どうやらここは艦上のようで周りに漣が聞こえている。

「ああ、月が綺麗だ」

少女が呟く。

「おそーい」

「まったくだ」

「あなたはいつもそう」

甲板の上には数人の少女が待っていたらしい。

「ゴメンゴメン。でも歌は誰かに聞いてもらうもの。わたし達の最後の歌だもの、一人くら観客が居てもいいじゃない」

「まぁ…」

「そうだな」

アウラを案内してきた少女の声に他の少女は一様に頷いた。

アウラは驚いていた。今の地上は人間の生きていける世界ではない。それなのに今自分は見えない何かに守られて地上に出ていた。

先ほどの少女の声を思い出しアウラは空を見上げる。

そこには月が燦々と輝いていた。

久しぶりに見る月。

月を回るリングが美しく輝いていた。

大昔は月にリングは無かったらしい。資料映像にしか残らない、はるか昔だ。

なんでも落下する月の破片を砕いて今の形に押し留めたらしいと言う事しか資料にはない。だが、それを成しえたのが誰か、アウラは知っている。

アウラの目の前の少女達は輝く装甲を身にまとい、背中には光る翼を現していた。

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