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異界の王女と人狼の騎士
第六十八話
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 しかし……。
 何かしっくりしないままの俺は、しばし佇んでしまう。

 さっきまでワイワイと漫談をやっていた二人の警官は、それまでのことがまるで何事もなかったかのようにもとの場所に戻り、退屈そうに立ちんぼしている。

「……どうかしたのか? シュウ。馬鹿みたいにぼーっとして。そんなんじゃ馬鹿が目立つわよ」

 俺は王女の口撃を軽く流しながら、
「いや、思ったんだけど……」

「なによ? 」

「姫の能力を知らなかったんだからアレなんだけどね。……えっと、あれは催眠術なんだよね。二人の警官を操ることができたのって」

「ふむ。そうね、簡単に言うとそう言うことになるわね」
 と、あっさりと答える王女。

「だったらさ、姫がそういった能力持っているんなら、わざわざあんなことなんかしないでさっさと催眠術をかけちゃえば良かったんじゃないかなって思ったんだ。うーん……まあ、俺をからかいたかったから、わざわざあんな迂遠なことをしたって言われればそれまでなんだけれど、ね」
 ぶっちゃけていうと、少し俺は怒っていたんだ。
 馬鹿にされているというか、からかわれているというか、とにかく何かにつけて王女の遊びの対象とされることが少し不満だったんだよね。
 普段の時なら、……まあ子供のやることだから仕方ないかって我慢もできるんだけど、今は非常時なんだ。寄生根に乗っ取られた何者かの手によって、次々と人が殺されているんだ。しかもその犯人の最終目標は王女を殺すことなんだ。それに時が経てば経つほど、人の能力を吸収して強くなるような奴なんだ。僅かな時間さえ惜しんでやらないといけないのに、何なんだ? この脳天気さは。

「ああ、怒っているのか、お前は。私がお前をからかうだけであんな事をしたって思ってるのね。……それは私の説明不足だった。そこについては謝ろう。ごめんなさい」

 珍しく素直な態度に出るんで、俺は怒りの矛先の持って行き場を失ってしまった。
「いや、そのそんな風に謝られると、あれなんだけど。……まあいいや。どうしてか教えてくれよ」

「いいわ、教えてあげる。本来なら即、あの警官達を操れば良かったの。当然、私もそうしたわ。……でもね、やっぱり力が相当に衰えているみたいなの。たった二人の人間相手にさえ、私の能力は全く効果がなかったのよ」
 と、寂しそうに言う。

「でも、彼らは今催眠状態にあるじゃない? 」

「そう。だからさっきの茶番を演じたんじゃない。私の今の能力では直接、彼らに働きかけて支配することができない。だから、彼らの意識を一度揺さぶってショックを与え、その隙間を狙うしかなかったの。だから一芝居打って彼らを騙してあげたの。自分たちが私に騙されたと知ったその時、彼らは驚きと怒りと恥ずかしさで混乱したわ。そこに心の
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