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成長
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第一章

                          成長
 子供の頃にだ。先生に言われたことだ。
「いい?最初は駄目でもね」
「駄目だったらやらない方がいいよね」
「そうだよね」
 教室にいる生徒達はこう言うのだった。彼等は今教室のそれぞれの席に座っている。皆小学生、それも一年生である。その彼等にだ。
 教壇にいる如何にも真面目そうな雰囲気の先生がだ。真面目な調子で言うのだった。
「努力したらね」
「努力?」
「努力って何ですか?」
「頑張ることよ」
 それだとだ。先生は自分の生徒達に話す。
「そのことについて勉強して頑張ればね」
「それでどうなるんですか?」
「その努力をすれば」
「最初は駄目でもよくなるわ」
 こう話すのである。
「どんなことでもね」
「じゃあ走るのも?」
「お勉強も?」
 生徒達は先生の話を聞いてだ。今度はこう話すのだった。
「そうなるのかな」
「よくなるのかな」
「そうよ。よくなるわよ」
 そうだとだ。先生の言葉は変わらない。
「だから。皆何かをするには勉強して」
 そしてだというのだ。
「そのことを頑張って続けていくのよ」
「そうすればよくなるんですか」
「勉強して続けていけば」
「そう。学校のお勉強も。スポーツも他のことも」
 とにかくだ。あらゆることについてそうだというのだ。
「努力すればよくなるからね」
「そうなんですか?」
「よくなるんですか?」
 生徒達はそう言われてもだ。信じていない生徒がかなり多かった。そしてそれは宮原光子も同じだった。彼女は先生のその話を聞いてからだ。
 どうにも信じられないという顔のままだった。そしてその顔でだ。
 家に帰りおやつのチーズケーキを食べながら母親にだ。先生が言っていたことを話した。
 話してからだ。こう尋ねるのだった。
「これって本当のことなの?」
「いいことを言う先生ね」
 光子の向かい側の席に座り同じケーキを食べている母は確かな声で応えてきた。チーズケーキのそのこげ茶色の部分にフォークを入れながら。
「その通りよ」
「じゃあ先生の言うことって」
「ええ、正しいわ」
 笑顔で娘に言うのである。
「とてもね」
「そうなの」
「いい?みっちゃん」
 光子の仇名だ。それを言っての言葉だった。
「人はね。努力しないとね」
「駄目なの?」
「そう、努力しないで手に入るものなんてないの」
「このケーキもなの?」
 ケーキを食べながら母に尋ねる。
「そうなの?」
「そうよ。ケーキもね」
「そうなの」
「ケーキはケーキを作る人が作ってるけれど」
「お母さんのお料理と同じよね」
「そう。同じよ」
 まさにだ。そうだと娘に話すのだった。
「努力しないと。美味しいケー
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