第二話 奴は正気じゃない、首輪を付けろ
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帝国暦 487年 2月 14日 オーディン 士官学校 ミヒャエル・ニヒェルマン
まいったなあ。中間試験の結果は予想よりも悪かった。千百十五番、Cランク。これじゃ期末試験はよっぽど頑張らないと戦史科は無理だ。あと五十点多く取れてれば千番以内に入れた、Bランクだったのに……。次の期末試験でドジを踏まなければ戦史科に行けたなあ。情報分析と機関工学でヤマが外れた、それに他の科目も思ったより点数が取れなかった。散々だ。戦史科が駄目だったら三年次の専攻は何処にしようか?
士官学校の廊下を歩きながらどんよりとした気分になった。声をかけて来る奴は皆試験が終わった事で明るい表情をしている。成績もそれなりだったんだろうな、羨ましいよ。あー落ち込む、誰にも会いたくないし話したくない。話しかけられるのも嫌だ。部屋に戻ってもエッティンガーが居る。あいつ煩いからな、今は一緒に居たくない。同居者って面倒な存在だよ。人の少ないところに向かった。
如何しようかな、専攻は。……空戦科、空飛ぶ棺桶なんかに乗りたくない。陸戦科、筋肉馬鹿は嫌いだ。技術科、講義を聞いていると頭が痛くなる。兵站科、落ちこぼれは嫌だ。情報科、性格悪くなりそう。航海科、気が進まない。……行くとこが無いな、消去法で航海科か。出来れば将来は作戦参謀になりたいんだけどな。このままで行くと危ない。僕はギリギリの所に居る。
目的地に着いた。ここなら大丈夫だろう、比較的人は少ない筈だ。試験前ならともかく試験後に図書館なんかに来る奴はそれほど多くない。適当な所に座って本を読んでる振りでもしよう。本は電子よりも紙が良いな、適当にパラパラめくっていれば声をかけて来る奴はいない筈だ、いても無視すればいい。
本を探していると人影が見えた。候補生じゃないな、教官? でも見覚えの無い後ろ姿だ。まだ若い感じだけど誰だろう。後を追うと教官がこっちを見た。襟蔓が一つ、肩線が二本。中将? 中将ってヴァレンシュタイン中将! 校長閣下だ。閣下がこっちに近付いて来た。やばい、如何しよう、身体が動かないよ。
「中間試験が終わったばかりなのに調べものかな? 頑張っているね、名前は?」
「ミ、ミヒャエル・ニヒェルマン候補生、二回生です」
慌てて答えたけど声が裏返りそうになった。校長閣下が声をかけて来るなんて吃驚だよ。それにしても閣下は若い。二十歳を超えている筈だけど僕らと殆ど変らない。背も小柄だから余計に若く見える。
「何を探しているのかな? ニヒェルマン候補生」
「あ、その、ツィーグラーの戦略の分析要約を探しています」
中間試験の勉強で使った本だ。良かった、上手く答えられた。……あれ? 閣下が変な顔をしている。何か間違った? ツィーグラーじゃなかったっけ。
「……
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