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怪我から
1部分:第一章
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できた。そうして。
 気付いたのはベッドの中だった。白い無機質な壁が見えた。そして周りを見回すと壁もカーテンも白で窓から見えるものも白い雲ばかりであった。白しか見えなかった。
「何処、ここ」
「あっ、実生」
「起きたんだね」
 次に両親の声が聞こえてきた。ふと左の枕元を見るとそこに二人がいた。何か心配そうな顔で彼女を見ていた。その二人にも気付いたのだった。
「まあ命に別状はないと聞いてたけれど」
「それでも。中々起きないから」
「起きないって」
 とりあえず両親の言葉の意味がわかりかねていた。
「何が一体どうしたの?そもそも」
「御前は交通事故に遭ったんだよ」
「歩道を歩いていたらそこに車が来てね」
「交通事故?」
 両親の話を聞いて今度は眉を顰めさせた。
「そういえばあの時歩道歩いていて」
「車にはねられてね」
「それでずっと意識を失ってたんだよ」
「そうだったの」
 ここまで言われてやっと事情を飲み込んだのだった。
「それで私ここにいるの」
「けれど命には別状はないからね」
「後遺症もないそうよ」
「そうなの」
 そこまで聞いてとりあえず自分は運がいいと思った。しかしここで両親はまた彼女に対して言ってきたのであった。それが何かというと。
「けれど足はね」
「ちょっと」
「足?」
 ここで自分の足を見た。見れば右足にギプスがされていてそのうえで吊り上げられている。ギプスはかなり厚く太腿にまで及んでいた。
「折れたんだよ、車にはねられた時に」
「その時にね」
「折れたって」
 そのことはまだ飲み込めなかった。何が起こったのかとさえ思った。
 そして。次に自然にこの言葉が出たのだった。
「じゃあ大会は」
「無理だよ」
「残念だけれどね」
 両親はここで沈痛な顔になった。そうしてその顔で娘に告げるのだった。
「今の大会はね」
「諦めて」
「そう」
 交通事故なら仕方がない、素直にそう思った。何よりも自分の今の右足を見てはそう思うしかなかった。もっと言えばそうとしか思えなかった。

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