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明日も爽やかに
3部分:第三章
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第三章

「そういうことはな」
「そういうものか」
「そうだ。じゃあとにかく今は」
「今は?今度は何だ?」
「そっちのことだけれどな」
 話を変えたのだった。
「今朝も調子よかったみたいだな」
「うむ、上々だ」
 健斗の言葉には笑顔で返す晴美だった。
「この調子でいけばやれる」
「そうか。それは何よりだな」
「そっちはどうなのだ?」
 晴美は微笑んで健斗に対して問い返した。
「ピアノの方は」
「悪ければ表情に出るからな」
「ははは、そうだな」
「考えてみればそっちもだな」
「昔からな。そうだからな」
 晴美は笑って健斗の今の言葉を認めた。
「嘘がつけないというのか」
「そうだな。とにかくお互いな」
「気合を入れていくとしよう」
 こんな話をしてだった。そしてまた朝になってだ。二人は会うのだった。
 晴美はだ。すぐに健斗に言った。相変わらずジャージで走りながら。
「今日か」
「そっちも今日だったな」
 健斗も自転車の上から彼女に言う。
「今日が試合だったな」
「そうだ。そっちはコンクールだな」
「ああ。やれる」
「期待しているぞ」
「こっちもな。期待しているからな」
 そしてだった。二人はだ。同時にこう言ったのだった。
「明日もここでな」
「会うか」
「明るい顔でな」
「会うか」
 こう話したのだった。そしてである。健斗はピアノのコンクールに、晴美は陸上の試合に出た。二人はそれぞれの場でベストを尽くした。
 だが、だった。まず健斗が落胆を味わうことになった。
 確かに全力を尽くした。しかしであった。
 優勝できなかったのだ。惜しくも二位だったのだ。優勝はだ。彼をしても唖然とするまでのだ。天才と呼ぶべき少女だった。
 その少女がトロフィーを受け取るのをだ。タキシードを着た彼は歯噛みして見ることしかできなかった。できたのはそれだけだった。
 その彼にだ。先生が慰めの声をかけてきた。
「よくやったよ」
「そうですかね」
「ああ、君はよくやったよ」
 こう声をかけてきたのである。まるでチャイコフスキーの様な外見の禿げて痩せた先生である。その先生が声をかけるのだった。
「だからな」
「だからですか」
「落ち込むことはない」
 そうだというのである。
「特にな。こういうことは常だからな」
「けれど」
「まあ二位でも充分だよ」
 また言う先生だった。
「それでもね」
「一位になれたんですけれどね」
 また言う彼だった。どうしてもという考えが出ていた。
「本当に」
「相手が悪かったよ。そういうこともあるさ」
 先生はまた話すのだった。彼は優勝できなかった。これは事実だった。そのことに慰めを受けてだ。どうしようもなくなっていたのだ。
 そして晴美もだ。
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