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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第209話 最初の一歩
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 この頭上遥か高く、高く……広がる青空。
  
 まるで、その向こうの宇宙を感じさせる程に、高い空だった。だけど、この空の高さだけは、現存する如何なるVR世界でも再現する事は出来ないだろうと思える。まるで過ぎ去った秋が忘れていったような、濃く澄んだ青の色の中に、小さな羊雲と薄い筋雲が層をなして浮かんでいる。
 そして、自然ではなく人工物である細い電線もこの空の中に、1つの風景として存在している。その細い電線には、雀が2羽肩を寄せ合っており、囀りを聞かせてくれる。




――……それは、この空 そして風景は、朝田詩乃にとってもいつも、見ている筈の空だった。だけど、詩乃は この空 澄んだ青い空が どう見ても 初めてに思えてしまう。




 はっきり言えば、どう言えば良いのか、どう表せれば良いのか判らない。ただ、光で溢れている感覚が網膜を当して、身体の中に広がっていくんだ。
 そんな、精神さえも吸い込まれそうな、途方も無い奥行を持つ晴天の青空を飽きることなく見入り続けていた。

 今は12月半ばだと言うのに、風がとても暖かく感じる。放課後直後の生徒たちの喧騒もこの校舎裏にまで届かない。いつもの東京都心の空ではない、今日だけは故郷の北の街と似た色の青空。

 それも、懐かしささえ思える青空。澄んだ空の様に、心さえも洗われる空。

 懐かしいのは、当然だ。これは、あの時以来(・・・・・)の空だったのだから。

「――……そう、だったわね。こんな、空だった。……お母さんと一緒に、手を繋いで歩いていたあの時の空は、ずっと……」

 そう、詩乃も過去からずっと見てきた筈の空だ。
 ……厳密に言えば、その日、その1日1日の空の色は、若干は違う。全く同じ空なのは有り得ない、と今なら思う。……その日、其々に特有の色があるからだ。天気は勿論、湿度や気温。事細かな数値で表したとするなら、全く同質の空などは存在しないだろう。物心付いた時には 父親が事故で他界してしまったと言う不幸もあった。自分自身にとっての唯一の救いと言うべきものは まだ赤子だった と言う所だろう。……思い出の数が多ければ多いほど……、失った時に心に空く穴の大きさが比例するから。……母親がそうだった様に。

 だけど、父親を失い 幼い少女の様になってしまった母親との暮らしは 毎日が幸せだった。どんな些細な事でも 話し、話される。ありきたりで、ありふれた、ただの日常。何でもない、そんなありふれた日々が幸せだった。



――……たった1日の数分で それが悪夢へと変わってしまったんだ。



『撃つぞぉ! 撃つぞぉぉぉ!!!』


 悪夢の声、そして 悪夢の姿。そして、悪夢の兵器。

 悪魔の様な男の顔が 自分を苦しめ続けた。でも、人
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