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自作即興・短編小説まとめ
ある日の立方体。

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 その出来事が始まったのはつい最近だった。
学校の中に謎の白い立方体が出現した事によって、この小学校と町を切り離したかのような空間に閉じ込められてしまった。
 僕達は先生と一緒に教室で待っていた、その時誰かが教室から抜け出して、校庭まで走っていった。それにつられて他のクラスの連中も一緒に出て行って、教室は数十人くらいしか残っていなかった。
 校庭にある立方体にみんなが近づくのを窓から覗いていた、僕はどうしてこんな異常な状況になっても一番不可解な物に躊躇なく近づけるのか本当に不思議だった。そしてすぐ、僕が何故ここまで冷静に物事を見ていることにもおかしな事だなと思っていた。
 僕達の担任の先生は机に肘をついて同じように窓を見ていた。いつもは真面目で少し怖い先生なんだけど、今日はとても楽しそうな顔をしている。それにいつもなら他の子達を止めているに違いなかった。自分の見えない部分で、何かが大きく変化している事に恐怖を感じ始めていた。
 僕は窓に変化を感じて、すぐに視線を向け直した。

 窓の外から見える風景が、殺風景からパレットに変化している。教室から出て行った生徒がそこに居た。白い箱に触ったりしている生徒も居る。教室から出て行った他の教師たちも遠くから見て何かを話している。恐らくそろそろとんでもないことになると、予感していた。
 白い箱に触れていた生徒が白く光りはじめた、そしてファンタジーにでも出てきそうな形に変わっていった。それは人と同じような二足歩行体型ではあるが、人間ではないようだ。獣人というのが最も近い。でもどの動物にも当てはまりそうにない。中には飛んでいたりする者もいるし、霧のような感じになっているのもいる。あの白い箱は触れる物に人以外の何かに変える様な力でもある様だ。しかし出来あがるものに分かりやすく形容できるのもあれば、全く想像を超えたのもあって、とても表現しにくかった。
 周りに居る教師や生徒はそれ見て逃げ始める者も出た。当然だろう。特に教師からすればそれがとても非現実的過ぎるので、理解が出来ないのだ。あまりに現実から乖離している。でも生徒はまだ知らない分、そういう物として理解を済ませているのかもしれない。高学年であればあるほど逃げていく者が多い。知っていれば知っているほど非現実的な事を受け入れられないのかもしれない。
 人間以外に変貌した生徒だった者たちは、なんとなく楽しそうにしている。

 僕はその光景を見て、自分の知っている事がどれだけ使えなくなるのかを知ってしまった。理科の授業の式も、算数の計算も、あまりに今までに依存しすぎていると、思ってしまった。

 その時、今まで天才と言われた自分が全て崩壊したように思えた。
 天才だったら恐らく、この状況を簡単に理解できたのかもしれない。
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