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ULTRASEVEN AX 〜太正櫻と赤き血潮の戦士〜
1-4 変身
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…。
ジンは街に繰り出していた。とはいっても、右も左もわからない身だから、誰かに付き添う形での外出となった。
現在地は浅草・問屋街。
今彼が着いているのは、風組のメンバーの一人、由里。この日の公園はないこともあり、街のことは特に詳しいとのことで、付いてきてくれた。
「助かったよ。僕だけじゃこの帝都のことわからなかったし、帝都とのことを知るちょうどいい機会だったから」
ジンがそばを歩く由里に感謝を述べた。外出は今回が初めてではない。前回も話したが、一度はすみれに荷物もちとして銀座の町に繰り出したこともある。
…めちゃくちゃ重くてたくさんの荷物を持たされて筋肉痛にされたが。
「いいのいいの。私も今日久しぶりの休みで買い物に行きたかったし。
で、どう?帝劇のみんな?美人がよりどりみどりだし、好みの女の子とかいたでしょ?」
「からかわないでくれよ…これでも結構気まずいんだよ」
確かに美人ぞろいだが、綺麗だからってそうすぐに惚れては軽い男と見られてしまうに違いない。ジンはなるべく色目を使わないように注意を払っていた。
「いいじゃない、今だってこんな美人と一緒なんだし?」
(自分で言っちゃいますか…)
確かに由里も美人の類でスタイルもいいし性格もいい方だ。でも自分で言っちゃうと妙な残念感が出てしまうのがジンの見解だ。
「そうそう、ところで何か思い出した?」
街に出向いてから数十分は経っていた。それなりに街の景色を見て回ってきた。そろそろ見覚えがある、の一言くらい出てもいいかもしれないのだが…。
「…ぜんぜん」
自動車、バイク、街灯、列車、商店、街を歩く親子連れをはじめとした人々。
ジンは帝都に点在するものをくまなく見て回ったものの、いまいちどれを見ても、何かを思い出す、といったことはなかった。すみれと銀座を歩いたときもそうだったが、残念な結果だった。…荷物持ちの件も含めて。
「まあ、きっとそのうち元に戻れるわよ。思い出せないからってくらい顔してたら幸せが逃げちゃうぞ?」
元気を出すように背中を軽く叩いてくる由里。
「そっか、そうだよな」
由里の言うとおり、深く考えても仕方がない。いつか記憶が戻ると信じて前向きに考えていこう。その方が気楽で楽しい。
「そうだ、何か文芸雑誌買おうか?思い出せなくても、帝都のことを知っておいたほうがお得よ。言うでしょ?敵を知り、己を知れば百戦危うからずって」
「それ、何か違う気がする…もしかしてわざとかい?」
気が付けば、他愛のない会話をしていた。記憶をなくしているなんて、嘘のように思えるくらいに。
何事もない平和な世。
記憶を失った状態で目を覚ましてから、不安が募っていた。しかし、米田が自分が帝劇に居座る事を許してくれたおかげで、そんな不安はなくなっていた。

しかし、そんなときだっ
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