暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第八話 闇からの誘い
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いるのか?」
「どこって、この間ラグドリアン湖で見たのよ。何人も人を引き連れて歩いているのを。それにウェールズ王子の顔なら、昔ゲルマニアの肯定就任式の時に来てたから覚えているのよ。あれだけいい男なんだし忘れるわけないじゃない」
「ラグドリアン湖だと?」

 募る嫌な予感は、確信へと変わっていく。

 レコン・キスタ――クロムウェル――アンドバリの指輪――死者の復活――死んだはずのウェールズ――

 喉の奥から絞り出すような声を士郎は出す。

「……ウェールズはどこに向かっていた」
「そうね、あたし達とすれ違ったから、首都のトリスタニアに向かっていたんじゃないかしら」 
「ちっ」
「シロウ待って! わたしも行くっ!」
「ちょっと、どうしたのよっ!」

 キュルケの返事を聞くやいなや、士郎は門に向かって駆け出した。その後をルイズも追いかける。
 唐突に駆け出した二人を見て、キュルケも反射的に後を追う。ずっと黙って聞いていたタバサもそれに続く。

「シロウっ! 一体どうしたのよっ!」

 あっという間に小さくなる士郎の背中に向け、大声で声をかけるキュルケ。ウェールズ王子が生きていると聞いてのこの慌てよう。ただ事ではないと分かるが、その理由が分からない。必死に士郎の後を追いかけていると、馬の用意を始めている士郎の元まで辿りついた。
 膝に手をつき息を荒げるキュルケの後ろには、ルイズとタバサが必死に走っている姿が見える。士郎は手の動きを止めずに、硬い声で告げた。



「アンリエッタが危ない」




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