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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
ヒルゼン
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―初代さま、二代目さま、お許しくだされ
 この術を使うということは、死神の腹の中に自らを封印し、そして死神の腹の中の相手と永久に戦闘を続けることになる術。自らの魂を代償に死神と契約して他人の魂を封ずるこの術は、正しく四代目が九尾の狐を封じるがために使ったもの。

「ふふ……」

 大蛇丸が、笑った。

「何が可笑しい」
「いいえ……哀れでね。かつては忍の神とまで謳われた貴方ですら、老いには勝てないなんて」

 病的に白い大蛇丸の指が己の皮膚を掴み、そして引き裂く。
 その下から現れたのは、白い肌にばら色の唇をした見るも美しい娘。

「お前、何者だ……!?」
「突然のこと過ぎて理解が追いつきませんか? 私です、大蛇丸ですよ」

 その顔立ちに、ヒルゼンは思わず一人の人物を思い出した。
 シソ・ハッカの母親。ある日突然、ハッカだけ残して行方不明となった娘。あの美しかった黒い瞳を、今は爬虫類めいた金の瞳がとって変わっている。楽音の如き声はかわっておらずとも、その声によって奏でられる言葉の一言一言が狂気に満ちている。あの穏やかな微笑を浮かべていたハッカの母親はどこにもいない。いるのは爬虫類めいた金の瞳を持ち、醜悪な笑顔を浮かべる大蛇丸だけだ。

「まさか貴様、あの禁術を完成させていたのか……! 恐ろしき人外の者よ……!」

 狐者異を人外と呼ぶのはひどいことだと、ヒルゼンは前々から思っていた。狐者異は妖だ。確かに人とは違う血を持つが、何も妖は狐者異だけではない。けれど木ノ葉の里は前々から狐者異をずっと追い詰めてきたのである――狐者異が木ノ葉の里に所属するようになってからずっと。様々なことが重なって狂っていった狐者異達を人外と呼ぶのなら、そうさせた自分たちもまたそうではないかとヒルゼンは時たま思う。
 大蛇丸が狂いはじめたのはその両親の死かもしれない。けれどそれだけで狂わない者もたくさんいる。その欲望を押さえつける術も沢山あったはずなのに抑えられず、自ら狂気を選んだ大蛇丸こそまさに真の人外だと、ヒルゼンはそう知った。

「あはっ……あはははははは、あっはははははは!! あっはははは、あっははははははっはっあははははは!!! うふふ、ふふふふ……あっははっはははははは!!」

 それを奏でる声は楽音の如し。ガラスを叩いたかのように美しい音であるのに、その中に混じる感情は嘲りと狂気の入り混じった醜悪なもの。これほどまでに美しく、それでいながらおぞましい音色を、ヒルゼンは未だかつて聞いたことがなかった。
今まで雲に覆われていた太陽がきらきらと顔を現し、大蛇丸を照らす。
 大蛇丸こそ正に狂気の象徴であると、この瞬間ヒルゼンはそう感じた。

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