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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十二 〜交州始末〜
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、目の前の愛紗が、同じ事をせねばならぬ理由など、何処にもない。
「いや。麻沸散を使ってくれ」
「ご主人様……お、お気遣いは無用に……」
「愛紗。確かに風雲急を告げている最中ではあるが、だからこそしっかりと治さねばならぬ」
「…………」
「お前は堪えきってみせるつもりであろうが、万が一激痛の余りに施術にしくじりがあったらどうする?」
 愛紗は何も言わぬが、納得はしておらぬようだ。
「これは我が命ぞ。それでも、聞けぬと申すか?」
「……ぎ、御意……。ふふ、そう仰せでは……もう何も言えますまい……」
 そこまで言うと、愛紗は眼を閉じた。
「聞いての通りだ。華佗、早速に取りかかって欲しい」
「承知だ。ついては、城下から卑弥呼を呼びたいのだが」
 やはり、あの人外と一緒であったか。
「星、呼んで参れ」
「私が、ですか?」
「そうだ。不服か?」
「……いえ。では、行って参ります」
 不服のようだが、奴を見ても平然としていられるのは星ぐらいであろう。
「他の者は任務に戻れ。私も片付けねばならぬ政務がある」
「御意!」
 後は、華佗に託すよりあるまい。


 翌朝。
「終わったぞ」
 滴る汗を拭いながら、華佗が部屋から出てきた。
「ご苦労。どうか?」
「ああ。確かに毒が内臓を蝕み始めていたが、流石剛強で鳴らした者だな。無事、施術は済んだ」
「ならば、助かるのだな?」
「暫し、養生は必要だがな」
「……そうか。この通りだ」
 私は、敬意を以て頭を下げる。
 華佗はただ、苦笑するばかりであったが。
「おお、土方。久しぶりじゃのう」
「卑弥呼か。相変わらず、奇っ怪な出で立ちだな」
「何を申すか。漢女の身だしなみが理解出来ぬとはな」
 ……理解したいとも思わぬがな。
「朝餉を用意させよう。どうだ?」
「ああ、いただこう」
「おお、儂も相伴して良いのじゃな?」
「うむ」
 警備の兵が明らかに引いているのだが、それは言わぬが華という奴だろう。

「暫く姿を見なかったが、あの後も各地を廻っていたのか?」
 食後の茶を喫しながら、暫し華佗と歓談する。
 いつもならばすぐに政務にかかるところだが、愛里(徐庶)と朱里が気を利かせてくれたらしい。
 卑弥呼は、一旦城下に戻ったようだ。
「うむ。まだまだ救いを求める病人は大勢居るのだ。だが、この交州は良いな」
「ほう、何故だ?」
「普通、これだけ温暖な地域は、それだけ疫病が蔓延しやすい。だが、俺が知る限り、ここ最近そういった事は殆どないらしい」
「なるほど。だが、それは私がこの地に来る以前から変わらぬ事のようだぞ」
「つまり、実質的に州刺史だった士燮の治政がそれだけ優れていた……そういう事だな?」
「うむ。実際、赴任後に愛里らが確かめたが、非の打
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