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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四二話 不安
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、ユーコンへと旅立つ……そして、恋をする。初恋を。

「それだけはあり得ません。忠亮さんに出会うまでは私は、何を為すべきなのか―――いえ、何を為したいのかすら見付けられず、思いつこうとすらしていなかった。
 忠亮さん、貴方と歩く道は確かに並みの路ではないと思います。だけど、私は遣り甲斐があると感じていますし……それに。」

 唯依が確かな意思を瞳に灯して応える。

「忠亮さんを選んだのは私です。己を通して後悔などありえません。」

 己はそれに、心の奥―――きっとそれは言葉にすれば魂とかそういうモノになるだろう場所から滲み出てきた言葉をそのまま口にした。

「そうか……良かった。ありがとう。」


 ―――安心した、自分がかつて旧世界で生き果てた己と違うように唯依も似ているだけの別人だ。
 かつての世界でそうだったからと、今回も唯依が己を愛してくれる保証は無い。

 未来は常に確定していない。常に変化の可能性を秘めている。
 今回の輪廻は、唯依が自分の意思で選んだとは言い難い。心を置いてけぼりに関係だけが結ばれてしまった。

 積み重ねが無いのだ。
 絆が薄いのだ。

 信ずる(しるべ)が少ないのだ―――それでもなお、彼女が自分を選んでくれたのだという実感がとても心強い。


「忠亮さんも不安だったのですか?」
「不安さ、未来は常に揺れ動いている。良いこともあれば悪い事もある。悪い事やもっと悪いだけという事もな。その可能性を考えるだけで不安で堪らないよ。」

 何が起きるかわからない、確かなことなんて何一つなくて。今日の平穏が一瞬で壊れてしまうことも日常茶飯事だ。
 それが現実だ。俺たちが生きている無情で理不尽で不条理な現実だ。

 何時、釣り縄が切れるかもわからない吊り橋を渡っているようなものだ。それでどうして恐怖や不安を感じずにいられるのか。


「………お前が無事で本当によかった。」

 切ないくらいに、安堵した様子で唯依の肩を抱き寄せる忠亮。この人は。誰よりも未来(おわり)を求めているというのに、誰よりもその未来に恐怖している。

「忠亮さん………。」

 そうさせてしまったのが自分なのだとわかっている。それでも、あの男たちには触れられても身の毛がよだつ嫌悪感しかなかったのに、彼に触れられているとほっと安心する。
 ―――その格差は自分が誰を愛しているのか、を妙実に唯依に教えていた。

 私は居なくなったりしない、貴方の傍にいる―――そう言いたい、だけど絶対はあり得ない。
 ただの気休めだ、慰めにしかならない。
 だから、少しでも触れ合って居たくて―――自分の肩を抱く彼に、身を預けるばかりだった。


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