暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十 〜陳留にて〜
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る街並みが目に飛び込んできた。
 人の数こそ洛陽には及ばぬが、皆が希望を持って生きている事がわかる。

「以前よりも賑わいが増しているな」
「当然ね。庶人の支えの上に私達は成り立っている、それを忘れている馬鹿が多過ぎるもの」
「相変わらず辛辣だな」
「事実を言ってるまでの事よ。そう言う貴方も治政の手腕は大したものじゃない」
「私は武人だ、政治はわからぬ」
「ふっ、惚けても無駄よ。ギョウといい、番禺といい見違える程発展させた事まで否定させないわ。貴方なら間違いなく、一国の宰相が務まるわ」
「その一国とは、華琳が差配する国か?」
「どうかしらね。尤も、それが一番あるべき姿でしょうけど」

 やはり、まだ私を従える事を諦めてはおらぬか。
 華琳らしいと言えばそれまでだが、雌雄を決さぬ限りは続くのであろうな。

「お兄ちゃん」
「どうした、鈴々?」
「お腹が空いたのだ。ちょっと、買ってきてもいいか?」

 その言葉を証明するかのように、鈴々の腹が盛大に鳴った。

「あら、歓迎の宴の用意をさせているわ。城まで待てないの?」
「にゃはは、ちょっと難しいのだ」

 悪びれずに言う鈴々に、華琳も苦笑する他ないようだ。

「歳三、どうするの?」
「うむ」

 本来であれば、警護役でもある鈴々が私の傍を離れる事は許されぬ。
 それこそ、愛紗が知れば目くじらを立てて怒る事であろうな。
 だが、既に此所は陳留。
 華琳が万全の警備態勢を敷いている地で、何か事が起こるとも思えぬ。
 甘いと言われるやも知れぬが、この程度は大目に見て良かろう。

「済まぬが、流琉を共に行かせたい。良いか?」
「そうね……」

 華琳は少し考えてから、

「いいでしょう。流琉、張飛を案内してあげなさい」
「わかりました。いいかな、鈴々ちゃん?」
「応なのだ!」

 言うが早いか、流琉の手を取り駆けていく鈴々。

「あわわわ、鈴々ちゃん……」
「あはは。うちの季衣そっくりですね、張飛さんは」

 ……些か、人選を誤ったような気もする。

「歳三」
「何か」
「信頼の証として受け取っておくわ。いいわね?」
「……うむ」

 ……最早、何も申すまい。



「負けないぞ、ちびっこ!」
「はるまきこそ、今に吠え面かかせてやるのだ!」

 その夜の宴。
 何故か、鈴々と季衣が火花を散らしながら料理を平らげていた。

「すみません……。私がついていながら」
「いや、流琉のせいではあるまい」
「そうね。それにしても、張飛が入った店で季衣が食事をしていたとはね」

 流琉が鈴々を案内したのは、陳留でも盛りの良さで人気の店だったようだ。
 食欲旺盛な鈴々に気遣っての事だったが、同じく
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