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宴のゲスト
6部分:第六章
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「そんな異常な人間が」
「残念だがいる」
 これが判事の返答だった。
「私もそれが今わかった」
「そうなのですか」
「殺人事件も数多く聞いてきた」
 判事は苦々しげな口調で次にこう述べた。
「しかし」
「しかし?」
「それでもこれだけ身の毛がよだつケースを私は他に知らない」
 こう言うのだった。裁判の際話を聞く陪審員達も吐き気をもよおす者が幾人もいた。
 ジャックは懲役二十五年になり他の三人は懲役十五年になった。イギリスでは死刑がなくこういう判決になったのである。
 これでジャックが反省する筈もなく判決を聞いて判事に罵声を浴びせかけた。
 事件はこれで終わったが何故彼等の名前を偽名にしたのか最後に書いておきたい。実はジャックの本名はもうわかっているのである。
 しかしジャックは死刑になってはいない。彼は生きているのだ。しかも懲役二十五年なので既に出所している可能性が極めて高い。
 この男は今もロンドンを彷徨っているかも知れない。それを思うとあまりの恐ろしさの為に本名を出すことが躊躇されたのだ。
 この事件は一九八二年に起こり彼はおそらく出所している。このことはよく覚えておかなくてはならない。そう、ロンドンには今もこの異常な殺戮者が蠢いているかも知れないのだ。霧の都に蠢く魔人は切り裂きジャックだけではない。過去だけでなく現在もいるのだ。


宴のゲスト   完


                   2009・6・21

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