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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
24話 船匠の願い
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るが、むしろ考え方によってはそれだけ知れていただけでも幸運であったくらいだろう。時折耳に入る悪態に物申したい気持ちを堪えて、更に留意してもらいたい点を告げる。


「それと、エンカウント率が異様に低い」


 これこそがヌシ熊攻略において、現状における最大の難所と言えよう。
 一応は縄張りを主張する証として木の幹に引っ掻き傷を刻む習性があるらしいのだが、それさえ見つかりづらいということで、強敵な上に尚且つ姿を見せないというものだからレアアイテムを夢見た物好きによって熊狩りが流行ったことは今も記憶に新しい。ドロップ品の情報さえ聞かなかったところを見ると拭いきれない不安を覚えるが。


「だからこそ手分けして探したいところだが、ヌシ熊の強さを考慮して………どうした?」
「えん、かう?」
「………その、なんだ。用語ってのがアタイは全然疎くてさ」
「………そうだったな。そこから説明しよう」


 首を傾げるヒヨリと、面目なさげな顔をするリゼルにエンカウント率が何たるかを説明し、苦い顔をされること数分。そして状況を理解したリゼルは面倒臭さを理解して露骨に嫌そうな顔をするが、残念ながらクーネとヒヨリのやる気は一向に萎える気配さえない。レイはクーネに委任しているような様子だ。ニオは船酔いで死にかけているが、強く生きてもらおう。


「とにかく見つければ良いんだね!」
「そうだな! お前が話を理解してないのは良く分かった!」


 それどころか、ヒヨリは何を聞いていたのか分からないような有様なのだが。


「とにかく、午後三時までヌシ熊を捜索。それでも姿を見せなかった場合は他の熊をターゲットに脂を集める。捜索時間を無駄に長引かせても仕方ないし、リン君もこの方針で良いかしら?」
「妥当だろう。ただ、木の幹に真新しい引っ掻き傷が見つかった場合は時間の延長を頼む。うっかり見つかったら勿体ないからな」
「わかったわ」


 そして、漠然ではあるもののクーネのプランニングで大筋の指針が定まり、ゴンドラも街の南門を抜けて圏外へと漕ぎ出した。視界の左を覆う緑は、ベータテストでは見られなかった景色だ。この街に至る前にも鮫と交戦しており、既にこの層でのイレギュラーは経験している。
 何事も無ければ良いのだが、あまり楽観視も出来ないだろう。せめて大事には至らないように最善を尽くさんとするしか、俺にはできないが。
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