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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十七話  反撃
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ませんね。本隊もそれほど時間は稼げないでしょう」
つまりその場合は足止め部隊を徹底的に叩くという事か。短時間で潰し逃げた本隊を追撃する。

「メルカッツ提督と挟撃するという手も有りますな」
「勿論です」
「戦いは避けるのだと思いましたが?」
リューネブルク大将が問い掛けると司令長官が頷いた。
「無意味な戦闘はしない、そういう意味です。同盟軍に行動の自由を許す事はしません。あくまでこちらの制御下に置く。その中で戦闘を避けるのです。制御から外れようとするならそれを阻止します」
クールだわ。ビュコック司令長官やグリーンヒル総参謀長、ヤン提督がこの人を見たらどう思うだろう? 溜息を吐くんじゃないだろうか。

「同盟軍は最初からハイネセンでこちらを待ち受けるべきでした。勝つ事は出来なかったでしょうが戦う事は出来た」
「同盟軍が勝つ可能性は有ったのでしょうか?」
私が問うと司令長官が私をじっと見てから首を横に振った。

「有りません。私は勝てるだけの準備をした。政略面、戦略面で圧倒的な優位を築き同盟軍の二倍以上の戦力を用意しました。そしてそれを支えるだけの補給体制と経済力を整えた。そのために門閥貴族を斃しローエングラム伯を排除したのです。同盟軍に勝つ可能性は無い」
「……」
これだけの代償を払ったのだ、勝つのは当たり前だと司令長官は言っている。

「戦って勝つのではなく勝ってから戦う。勝敗を競うのではなく勝敗を認めさせるために戦う。今回の戦いはそういう戦いです。同盟軍も自分達が敗けた事は分かっているでしょう。ただその事に納得出来ずにいるのだと思います。ですが徐々に自分達が敗けた事を認めざるを得なくなる筈です」
戦闘中の軍人というよりも実験結果を見守る科学者の様な口調だった。



宇宙暦 799年 4月 14日    第十三艦隊旗艦ヒューベリオン ヤン・ウェンリー



「駄目ですな、帝国軍は我々との戦闘を避けています」
ムライ参謀長が溜息交じりに状況を評した。口調には憤懣と遣る瀬無さが滲み出ている。司令部の皆が同じ想いだろう。顔色が良く無ければ雰囲気も良く無い。心の中は現状に対する不満、憤り、遣る瀬無さ、無力感で一杯に違いない。

帝国軍は同盟軍と戦おうとしない、何とか少しずつ詰めてはいるがそれでも未だかなり距離が有る。我々を牽制し動けなくしている間に別働隊をもってハイネセンを攻略させるのだろう。そして我々はそれを理解していながら為す術も無く帝国軍の術中に嵌っている。……敗けた、と思った。おそらく皆がそう感じているだろう。口に出さないだけだ。

「閣下、何か良い方法は有りませんか? このままではハイネセンが……」
グリーンヒル大尉が問い掛けてきたが“さあ”と曖昧に答えた。二個艦隊程残して帝国軍を食い止め
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