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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
epilogue
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 あれから二ヶ月が過ぎ、私は普段の仕事に戻っていた。無論、藤崎も大学と演奏会で飛び回っている。
 そんなある日。私はあの事件のファイルを開き、色々と付け足していた。後になって、藤崎と米屋さんから手紙が相次いで届き、そこに私が知らなかった事実が書かれていたためだ。
「しっかしなぁ…。いくら昔ったって、身近に同じ名前を何人も付けなっての…。」
 驚いたことに、同姓同名が何人もいたのだ。堀川家当主ですら、栄吉が二人、謙継が四人もいるそうだし、イトやハルは関係ないとこを含め十人以上いたそうだ…。そのため、幾つかの古文書なんかは、あべこべの情報が混じっている可能性すらあるそうで…。これはもう…諦めるしかない…。
 次だが、これは私を驚かせた。なんと、この事件の犯人として、あの染野さんが捕まったのだ。これは松山警部に連絡を入れて確認したが、全ての証拠が揃ったとのことで逮捕したそうだが…逮捕した時には、既に廃人同然になっていたという。松山警部曰く、起訴は出来ないだろう。
 私はこれを藤崎に電話で言うと、彼は簡単にこう言ったのだった。
「染野さんて、櫻華山へ遺体になった妾を捨てにいった奴の子孫だ。因みに、東京から嫁いだ女将は、実は分家である早良家からの出で、仲居頭は乳母をした女の家系だったんだ。言ってなかったか?」
 聞いてない…。ま、私が眠っている間に調べあげたんだろうけど。
 そんな風に多くの情報が入ったものの、これは正規の事件として扱うことは出来なかった。
 だが、私はこれも一つの記録として残すべきだと考え、新しいファイルを創ったのだった。

《幻想事件簿》

 ファイル名にそう書き記し、棚の片隅へとそれをしまった。
 それが今後、どのような意味を持つのかなんて分からない。ただ…科学の及ばない、光の射さない淵の底で、何かが蠢いているような…そんな気がしてならなかった。
「あなた、お茶にしましょ。」
 そう言って、亜希がお茶を持って事務所の扉を開いた。
「あ、そうそう。結城君から手紙が届いてたわよ?」
「…結城から?」
 私は露骨に眉を潜めた。あいつからくる手紙は、良いものなんて一つもないのだ。
 ご丁寧にも、亜希が手紙を持ってきてくれたので、私は仕方無くその封を切った。中から三つ折りの便箋を取り出して開くと、最初は事件についての回想が書かれていた。だが、二枚目に入って、私は我が目を疑った。
「依頼…だと!?」
 そこには、とある小さな山奥の町に結城の知人がいるようで、その知人の相談を受けて欲しいとあったのだ。足代諸々は結城が出すと書いてある…。
「何で結城が!?」
 まぁ、純粋な依頼料は本人が出すのだろうが…。私は訝しくも思ったが、結城には借りもあるし、受けることに決めた。
「あなた…受けるつもり?」
 
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