第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十一 〜諸葛姉妹〜
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しょう。まず、曹操さんは覇気に溢れ過ぎています。庶人を大事にする姿勢はいいのですが、それはご自身の理想に沿う形での事。私の想いとはかけ離れています」
「…………」
「孫堅さんは武に優れ、それで揚州を纏め上げていますが、孫堅さんご自身に何かあれば、その支配も簡単に瓦解してしまうでしょう。それでは、庶人が安心して暮らせません。孔融さんは天下に大事を為せる人物ではありませんし、袁紹さんはまだまだ頼りありません」
それで、私を頼るというつもりか。
「しかし、陶謙殿。拙者は既に交州牧、この徐州とは遠く離れた地に向かう身でござるぞ?」
「ええ、わかっております。……ですから、あなたにこの徐州を託せるのはまだ先の事でしょう。尤も、その頃には実力で勝ち取っていただく事になっているかも知れませんが」
「……では、拙者に何を求めておられるのですか?」
「陳登さん。お連れしなさい」
「はっ」
陳登は一度部屋から出ると、一人の少女を連れて戻ってきた。
歳の頃は、恐らく星と変わらぬであろう。
背格好は疾風に近いが、もう少し華奢な印象を受ける。
「山吹さん、自己紹介なさい」
「はい」
少女は私を向くと、一礼した。
「初めまして。私は糜竺、字を子仲と申します。以後、お見知り置き下さい」
「糜竺殿と申せば……この徐州の柱石。そうだな、愛里?」
「は、はい。別駕従事を務めておられる筈ですが、間違いありませんか?」
「そうです。……ふふ、私の事もご存じとは、流石ですね」
と、彩が糜竺をしげしげと見つめているのに気付いた。
「如何致した?」
「は。……糜竺殿、相当弓馬に長けておいでと見ましたが?」
「かの張コウ様にかかっては敵いませんね。些かですが、心得ています」
糜竺は、頭を掻いた。
病を得ている陶謙を補佐し、かつ武勇にも長けているとは。
……ふむ、まだまだ優れた人材はいるものだな。
「土方さん。私がお願いしたいのは、この娘の事です」
「糜竺殿の事、とは?」
「この娘には、別駕従事を任せていますが、元々は商家の出で、資産も豊かです。これだけ有能で、かつ裕福な者がこの徐州に留まっていれば、必ず誰かの目に止まるでしょう」
「…………」
「……それが、もし山吹にとって意に沿わない人物であれば、そんな不幸な事はありません」
糜竺は、黙って陶謙の話に聞き入っている。
恐らくだが、予め言い含められているのであろう。
まだ人となりを確かめた訳ではないが、これだけ陶謙に買われている人物だ。
何の謂われもなしに、粛々と主人の命に従うだけとは思えぬ。
「それならばいっそ、あなたに託したいのですよ、土方さん。私にとっては、掛け替えのない娘を、ね」
「……糜竺殿。貴殿は、それで宜しいのか?」
「本当は、
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