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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
Y 同日.PM.9:28
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 演奏を終えた俺に、ルートヴィヒ神父は静かに微笑みながら、そう言ってくれたのだった…。
 真夜中…と言うよりは、もう明け方の四時を回り、人々は少しずつ家へと戻り始めた。それまでは教会で温かい飲み物を出し、俺達は人々が安心出来るように努めていた。それは、他の4つの演奏場所でも同じだったようだ。
「藤崎様、有り難う御座いました。遺体も全て集められたとのことですし、貴方も団員の方々を連れてお戻り下さい。残られている方々もそろそろ帰られると思いますので、後は私一人で大丈夫ですので。」
 休んでいた俺達のところへ来て、ルートヴィヒ神父がそう言った。
「もう四時を過ぎてたんですね。そうですね…それではお言葉に甘えることにします。」
 俺がそう言って立ち上がると、団員の一人である新谷がこう言ったのだった。
「先生…さっきから田邊君の姿が見えないんですが…。」
 俺はハッとして辺りを見回した。もう人も疎らな教会内。団員達は俺の回りに集まっていたが…そこへ田邊の姿を見い出すことは出来なかった。
 俺が辺りを見回しているのを見て、ルートヴィヒ神父は心配そうに俺へと話し掛けた。
「どうかされましたか?」
「いえ…団員の一人が見当たらないので…。」
 俺がそう言うと、ルートヴィヒ神父は何か思い当たる様に頷きながら言った。
「あの青年でしたら、十五分程前でしょうか…外へ出られましたが。」
「え…?」
 俺が怪訝な顔をすると、ルートヴィヒ神父は済まなそうに言った。
「私はてっきり貴方の許しを得ているとばかり…。」
「いや…もう朝方ですし、そう考えて当然ですよ…。」
 俺が慌ててそう答えると、ルートヴィヒ神父は不安げな表情を見せて返してきた。
「ですが…この様な時に一人で町に出るのは…。何かあったのやも知れません。皆で探しに出た方が賢明かも知れませんね。」
「そうですね…。ですが、団員達もかなり疲労しています。ここで他の団員達に危険が及ぶようなことがあれば、それこそ大事と言うものです。」
 そうルートヴィヒ神父と話していると、一人の人物が俺達のところへと歩み寄ってきた。その人物とは、俺も面識のある人物だった。
「プフォルツ警部!」
「貴方は…藤崎さんじゃないですか!いやぁ、今まで走り回ってまして、今しがた此方へ入ったんですが…貴方も演奏を?」
「その様子から察すると、伯父達から経緯は聞いたんですね?」
「ええ…。ですが、私の様な凡人には理解し難い内容です。そうは申しても…あの遺体を前に、それを否定することは出来ませんがね…。それで、先程の話しですが、誰か行方不明になっているのですか?」
俺はそう考えないよう、心の中で希望を描いた。いや…そうするしか出来なかった…。
「藤崎様。後は警部にお任せし、貴方は戻ってお休みにならねば。貴方が倒れて
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