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無人列車
4部分:第四章

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第四章

 見終わったところで隆之の部屋の最寄の駅に着いた。ここで降りる。そして寂しい二人だけのプラットホームでだ。隆之は浩成に対して言ってきた。
「いませんでしたよね」
「誰もな」
「何度調べてもなんですよ。いないんですよ」
 それを言うのであった。
「俺以外には」
「そうだな。しかもだ」
「ええ」
「皆身体が少し透けていたな」
 浩成が今度言うのはこのことだった。
「それも歩き方もな」
「流れる感じですよね」
「絶対に人間じゃない」
 浩成は断言した。
「あれはだ。人間じゃない」
「じゃあ何だと思いますか?」
「御前が考えているのと同じ存在だ」
 こう返すのだった。
「多分な」
「そうですか」
「それだ。それしか考えられない」
 浩成は目を鋭くさせて話す。
「だからだ。伊豆並」
「はい」
「御前はもう終電には乗るな」
 それを止めろというのだ。
「この終電にはだ。いいな」
「絶対にですか」
「ああした存在はあまり長く見るとそれだけで危うい」
 だからだというのだ。
「御前もあの中に入れられることも考えられる」
「俺もですか」
「だから止めろ」
 くれぐれもだというのだ。
「いいな」
「そうですか。あまり乗っているとですか」
「御前もあの中に入る」
 また言う浩成だった。
「すぐに部屋を引き払え」
「それで別の部屋を探せと」
「その間は俺のマンションに入れ」
 同居するというのだ。
「いいな、とにかくあの電車には乗るな」
「わかりました。それじゃあ」
「まさかと思ったがな」
 こんなことも言う浩成だった。
「ああした存在がいるとはな」
「病院には多いって聞いていましたがね」
「うちはたまたまだろうな。それではだ」
「ええ、今日はこのまま帰りましょう」
「そうだな。まずは休もう」
「はい」
 話をしながら駅を後にする。そのうえでその日は隆之のマンションに二人で休んだ。隆之はそれからすぐに自分の部屋を引き払い病院に近い部屋を借りた。それからその電車に乗ることはなくなった。

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