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二人で笑おう
僕 2
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「よく知っているね」
「一か月もいたらね」
 彼女は得意げにそう言って、僕より先に横断歩道の押しボタンを押した。ピピピピと機械音が、車の走行音に交じる。
「やっぱり車多いね」
 通り過ぎる車を見ながら、彼女は言った。
「春休みだからね」
「あんた春休み遊ばないの? 暇なの?」
 随分おかしなことを言うな。寝言だろうかと疑ったが彼女は寝てなかった。当たり前だが。
「君と遊んでる」
 信号が赤から青へ変わる。今度は僕が先を行く。
「遊んでるの?これ」
 彼女も負けじと僕に追い付こうとする。同時に杖のリズムも速くなる。
「うん、君といる以上の遊びなんてないよ」
「私との関係は遊びだったのね」
 多分そのセリフは使い時を間違っている。
「というかさ、私以外あんた友達……あ」
「卓也を忘れるな」
 不憫な男だった。数少ない僕の友達だと言うのに。
「最近遊んでるの?」
「うん、今度くらい卓也の家でジャグリングの練習でも」
 彼の父親が元サーカス団員であるため、僕も暇つぶしに彼とジャグリングやバンジージャンプをしたりしている。うん実に高校生らしい趣味だ。
「高校生らしくないね」
 呆れたように彼女は言う。らしくなかったのか。まあ世間一般の高校生の遊びを僕がやっていても似合わないと言われそうだが。
「やってみたい気はするけどね」
 あまりにも貴重な彼女の意欲的な発言に、耳を疑う。
「へえ、女の子でやりたいって人あんまりいないけど。珍しいね」
「そうかな」
 変わり者なのは知っていたが、好奇心が彼女の中に残っている事実は僕の心に小さな安心感を与えた。
 競争の末、横断歩道を二人同時に渡り切った。信号がちょうど赤に変わり、止まっていた車はまた走り出した。公園まであと少しだ。せっかくのことだから二人でアイスでも食べよう。財布にはいくらか余裕がある。

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