暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第70話 ジオ戦前の休息
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押し黙った。

 あの時、志津香は斬られそうになった。……その身体、その華奢な身体に ヘルマンの巨大な黒刃が迫っていたんだ。それを見た瞬間に、自分は我を忘れそうになった。ユーリにとってもトラウマになりかねない状況だったんだ。……志津香を 助ける事が出来て 本当に良かったと、心底安堵していたんだ。

『ゆぅが……、私を助けてくれた』
『当然、だ。……大切な人を失うのは もう、もう 嫌だ。……もう、二度と失いたくないから』
『うんっ……、私も同じ。あの時、レッドが襲われた時。皆が、……ゆぅ、が、いなくなってしまうんじゃないかって、本当に、怖かった、から』

 志津香はそう言うと、突き出した右手を下ろし、当てていた部分に、今度は自分の頭を載せた。丁度、ユーリに寄りかかる様に。

 そして、ユーリに身体を預けたまま、言う。

『……私、ちゃんと 言えてなかった。お父様にも教わっていた筈、なのに。『ちゃんと礼を言おう。助けてもらったら、感謝を伝えよう』……って 教わっていた筈なのに』
『……ははは。凄いな 志津香。あの頃の歳を考えたら、覚えてる方が難しいと思うぞ』
『茶化さないで。……お父様の教え、なのよ? それに ゆぅと再会したあの時に、また 会う事が出来た。……頭に、いえ 心に刻んでいる。……あの頃は 本当に、私は 満ちていたから』

 志津香は、ユーリの右手を取った。そして、両手で包み込む。そして 目を瞑った。ユーリの手をしっかり握って、その温もりを感じている様に。

『ゆぅ。……ちゃんと、言えてなかった。 あの時も、そして 今も。……皆を、 私を 守ってくれて、ありがとう』
『………』

 ユーリは、志津香のその言葉を訊いて、左手で志津香の手を包み込んだ。

『当たり前だ。絶対に守る。……絶対に』
『……うん。 でも』

 志津香は、目を開いて ユーリを見た。
 その表情は 笑顔。一番の笑顔だった。

『私も、ゆぅの事、守るから。……ずっと 守られてばかりは嫌。失うのが怖いのは私も同じだから、……絶対』
『……ああ。そうだな』

 ユーリも笑顔になると同時にだった。

『これからも、よろしく頼む。……志津香』
『こちらこそ、ゆぅ』

 笑顔のまま そう伝え合って 無事に想いを伝える事が出来たのだった。

 嘘偽りのない、ユーリに対する想いを。

 そして、それは ユーリもきっと同じ事だろう。
 
――大切な人の為に 戦う。
 
 それは、ユーリが戦う大きな動機の1つ、だから。




 


 そして、志津香は枕を抱きしめた。

「……出来る事を全力でやる。最後に皆と一緒に笑い合う為にも。ヘルマンだろうが、……魔人、だろうが。絶対に出来る。皆と。……ゆ
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