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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第十九話 それぞれの戦後(その1)
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にエーリッヒはどうしているかと話題になったがここ最近ではむしろ避けるようになっている。かなり心配している。

やれやれだ。軍人の夫など持たせるべきではないな。いや、まだ夫ではなかったか。何とか上手く切り抜けて欲しいものだが……。そんな事を考えながら新無憂宮の廊下を歩いていると声をかけられた。

「ブラウンシュバイク大公、如何されたかな、浮かぬ顔だが」
「おお、リヒテンラーデ侯か」
「察するところ、養子殿の事か」
目の前で国務尚書リヒテンラーデ侯がニヤニヤと笑っている。相変わらずの悪相だな。

「折角迎え入れた養子なのだ、心配するのが当然であろう」
「まあそうだな」
「国務尚書にも無関係とは言えないはずだが」
政府、軍部、ブラウンシュバイク、リッテンハイム、その四者協力の一環としてあの男が当家の養子になったのだ。ニヤニヤ笑う事ではあるまい。

「確かに、どうかな、私の執務室に寄って行かぬか。少々話したい事も有る」
「ふむ、分かった、寄らせてもらおう」
二人並んで新無憂宮の廊下を歩いていると貴族や宮中の職員が挨拶をしてきた。どういう訳かその連中の顔がこちらを笑っているように見えた。わしがエーリッヒを心配している事を笑っているのか……。馬鹿げている、気のせいだ……。

国務尚書の執務室に入るとリヒテンラーデ侯がグラスとワインを取り出した。
「良いのか、昼間から酒など」
「たまには良かろう、大公にはこれが必要なようだ」
「ふむ」
気遣ってくれているのか、珍しい事も有るものだ。

リヒテンラーデ侯がグラスにワインを注ぐとわしに手渡した。
「それに祝うべき事も有る」
「祝うべき事?」
「グリューネワルト伯爵夫人が懐妊した」
「まさか……」

伯爵夫人が懐妊した? 生まれてくる御子が女子なら良い。それが男なら……。考え込んでいると笑い声が聞こえた。リヒテンラーデ侯が可笑しそうに笑っている。

「?」
「許せ、伯爵夫人の懐妊は嘘だ」
「嘘?」
わしの問いかけにリヒテンラーデ侯が頷いた。嘘か……、とんでもない老人だな、わしを騙すとは。睨みつけたが侯は笑い続けている。

「祝うべき事は別にある。先程軍から報せが有った。遠征軍がイゼルローン要塞に戻った。大勝利を収めたそうだ」
「ほう、そうか」
「うむ、祝うべき事であろう」

確かに、祝うべき事だ。だがそれ以上にホッとした思いが有った。
「そうか、勝ったか……」
「エーレンベルク軍務尚書が大公の邸に連絡を入れたのだがな、こちらに来ていると言われたようだ。それで私に報告がてら大公に知らせて欲しいと頼まれた」

「そうか、それは手数をかけた」
「私もなかなか親切な男であろう?」
「確かにそのようだ」
侯が笑い出した。共に笑いながらグラスを口
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