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SNOW ROSE
騎士の章
W
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 メルの街から七日の後、彼らは王都プレトリスに入ることが出来た。
 無事に辿り着けたは良いが、道中で見てきた惨状を思うと、とても安堵出来るものではなかった。
 豊かであったリグの街を出て村を幾つか越えると王家直轄領となるのだが、これが散々な有様なのである。
 理由は分からないが作物が不作で、穀物や野菜などがかなり物価が高騰していたのだ。
 どうやら情報の伝達がかなり遅れている様子である。
「プトの村以降、王家が直轄する領地に被害が多いようだな。昨年の徴税が仇となってしまったか…。」
 エルンストは腕組みをし、何かを考え始めた。
 昨年は平年並みの収穫量であったのだが、どういう訳か直轄領だけ徴税が多かった。
 それは第一王子ガウトリッツが父王から拝領した南三分の二が対象となっており、麦の五分の三が搾取られたのである。
 理由は不明で、これでは食べるだけでもやっとのこと。その上この領地は水辺から遠く、用水路を引いてはいたのであるが、それが春の雪融け水があふれた際に決壊してしまっていたのだ。
 その修復は国の役割であったのだが、それすらも御座なりにされ、民は自らの手で掘るしかなかった。
 しかし、それでは高が知れたこと。やはり水は行き届かず、苗にする麦も少なかったことも手伝って、ひどい不作となった。
 暫らくして、クレンはエルンストに問った。
「これだけひどい不作ですと、何か代用出来るものとかを推奨出来ないものなんでしょうか?豊かな土地から物資を受けるとかは?」
 もっともな意見だが、エルンストは首を横に振ったのである。
「直轄領では無理だ。それは治める者が決めることで、その者が命を下さない限りは許されない。王自らが命じれば別だが、今まで辿った村はガウトリッツ様が王より拝領された土地。かなり難しいと言える。もっとも、麦に並ぶ穀物などないのだかな。」
 そこへ二人の話を聞いていたマルスが、首を傾げて不思議そうに言った。
「何言ってるんだ?メッセンがあるだろ?」
 そう言われた二人は、マルスの言った言葉に怪訝な表情を浮かべたため、仕方無くマルスはそんな二人に窓の外を指差して返した。
「何だ、お前ら分からないのか?あそこに山程生えてるじゃないか。」
 馬車から見えている景色は草野原である。そこに生えているのは、ほぼ全てがクベと言う雑草であった。
「マルス、あれはクベと言う雑草だぞ?毒があって食物としては使えない。」
 エルンストは呆れ顔でこう言ったのであるが、マルスはそれにこう言い返した。
「毒素があるのは殻と身の間だけだ。脱穀した後水洗いし、天日で乾燥させれば問題ない。知らないのか?」
「そんなの聞いた事ありませんよ!どこで知ったんですか?」
 隣で聞いていたクレンは目を丸くして聞いてきた。勿論エルンストもそれ
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