九話:進みゆく歯車
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
八神はやての朝は早い。家の中で一番に目を醒まし朝食の準備をするためだ。
自分の横で呪いウサギのぬいぐるみを抱きしめまだ幸せな夢の中に居るヴィータの姿に微笑みながら布団をかけ直す。
そして起こさないようにそっと布団から抜け出しキッチンへと向かう。
自分以外誰もいないだろうと思っていたがソファーに先客がいることに気づく。
ピンク色のポニーテールが揺れていることからシグナムだろうとあたりをつけて挨拶をしようとするが出かけた言葉を飲み込む。
ゆっくりと正面に回り込んでみるとシグナムはコックリコックリと舟をこいでいた。
そして、すぐ足元にはシグナムの脚を冷やさないように丸くなって寄り添うザフィーラ。
そんな仲睦まじい姿にクスリと笑い風邪を引かないように二人に毛布を掛ける。
「始めの頃は私が寝るまで寝んって言っとった子達やったのにな。……信頼してくれとるんかな」
自分を信頼しているから、ここを安全な場所だと認識してくれているから気を抜いているのだと思うと自然と笑みが零れる。
特に滅多に見られないシグナムの安心しきった寝顔を見られて今日は良い日だと思い料理の支度を始める。
しばらく、スープを煮込んだり野菜を切ったりしているともぞもぞと人が動く気配を感じる。
「ん…ああ……」
「ごめんな、起こした?」
「いえ……」
「ちゃんとベッドで寝やなあかんよ。風邪引いてまう」
自分が失態を犯したことに気づきシグナムが少し顔をしかめているとザフィーラもはやての声に反応して目を醒ます。
とにかく、これ以上無様な姿は主の前では見せられないと毛布を畳み謝罪の意を示す。
そんな姿にはやては小さく笑い何気なく話を続ける。
「シグナムは昨夜もまた夜更かしさんか? 夜更かしはお肌に悪いんよ」
「え……ああ、その……すみません」
下手に理由を話すわけにもいかず、かといって彼女の性格上嘘を吐くことも出来ず曖昧な謝罪になってしまう。
そんな素直な彼女の様子が愛おしくてはやてはまたクスリと笑う。
シグナムは笑われたことに少し恥ずかしくなり誤魔化すように電気をつける。
「シグナム、ホットミルクいる? 温まるよ」
「はい。ありがとうございます」
「ザフィーラもいる?」
「頂きます」
体が冷えてはいないかと心配して持ってきてくれたことに自分は大切にされているのだと改めて理解し噛みしめるようにお礼を言う。
ザフィーラもまた自身の幸福を噛みしめるようにミルクを飲む。
そこへ余程慌てていたのか寝癖の付いたままのシャマルが飛び込んでくる。
「すみません、寝坊しました! もう、本当にごめんなさい」
「ええよ。いつも手伝ってくれとるんやから、偶には寝坊ぐらい」
飛び込んでくる
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ