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ソードアート・オンライン 穹色の風
圏内事件 6
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にしてアインクラッドに存在する全てのレッドプレイヤーの頂点に立つ男が、この場所にやってくるのでは……と。
 ――そんな、まさか。やめてくれ。嘘っぱちだ。タチの悪い冗談に決まってる!
 シュミットの叫びはしかし、震えた唇を微かに上下させることしかできない。そしてすぐに、そのこ
とに心から絶望することになる。このとき、自らの聴覚を絶叫で埋め尽くせていれば。じゃり、じゃり、と近付いてくる、死刑宣告のような足音を聞かないでいられたならば。一体それは、どれだけ幸せなことだっただろう――?

「ひっくり返せ」

 短く告げられた命令が、新たな人物の登場を声高に告げた。シュミットがその存在を飲み込むより早く、ジョニー・ブラックのつま先が腹の下にねじ込まれ、そのままごろりと転がされる。仰向けになったシュミットの視界に、一人の男が映った。
 灯りのない夜よりなお黒い、膝下までを包むポンチョ。そこから伸びたフードが、顔を目深に隠している。右手に握られた、中華包丁のように四角い大型ダガーは、啜ってきた何人もの生き血でコーティングされているかのような赤黒い色味を帯びていた。

「Wow……確かに、こいつはでっかい獲物だ。DDAのリーダー様じゃないか」
「……《PoH》……」

 くつくつと肩を揺らして笑うポンチョの男の名を、シュミットは絶望に染まった声で小さく告げた。その瞬間、シュミットは己の運命を悟った。自分は、今、ここで、彼らによって殺されるのだと。どこか夢見心地だった意識がすうっと現実に戻ってきて、同時に認識した現実的な恐怖が全身を這い回った。
 何故……。
 シュミットは自らに襲い掛かってきた絶望の深さに耐えかねて目を瞑りながら、何度も何度も疑問文だけを繰り返していた。誰にも行き先など伝えていなかったというのに、何故この三人はこの場所に来たのか。アインクラッドでも最大級の犯罪者が、理由もなくノコノコとこんな下層のフィールドを歩いているとは考えにくく、ヨルコとカインズが居場所を流したとも思えない。第一、彼らは今、自分と同じように命の危機に瀕しているのだから。
 となれば……何か別の理由で偶然通りがかった三人が、ちょっとした思い付きで自分たちを襲ったというのだろうか? そんな、馬鹿げているとしか思えない不運が……否、ひょっとしたら、それがグリセルダの復讐とでも言うのか? ……しかし、だとしたら、何故ヨルコとカインズまで殺そうとする? 彼らはグリセルダを殺した真犯人を暴くため、ここまでしたというのに。なのに、何故――。
 恐怖と絶望の中に諦めを滲ませ、脳裏をよぎった一人の女性にシュミットは問いかけた。その直後。
 ――ごうッ! という音が聞こえたかと思うと、プレートアーマーに覆われたシュミットの長身が宙に浮いた。一瞬遅れて、獣系モンスターの突進
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