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遺跡出現までの10日間【3日目】 その11
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【3日目】 その11

「ん……?」

 ひんやりとした石畳で作られた床に鉄格子がはめられた牢獄のような部屋の中で小さな唇から短い吐息を漏らし、ナナは意識を覚醒させる。

「ここは……どこアル……?」

 自分の細い腕と足につけられた大きな枷をボーっと見つめながらポツリと呟く。

「ッ!?」

 途端、頭の中で稲妻のように記憶が頭をよぎった。そうだ、確か奴隷商に売られた時に今のご主人様と争ったセルバーニとかいう太ったエルフとその私兵に連れ去られて……。

 薬でも嗅がされたのか頭がガンガンし体に力が入らない。牢屋には小さな蝋燭の明かりが一つだけしかなく薄暗い。

「…………?」

 自分の隣で何かが寝転がっている。薄暗い牢屋の中、目を凝らしてみてみると―――――――――――

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 あの時、自分のひとつ前に売られたウサギの耳が生えた少女がいた。いや、正確には「少女だった物」が横たわっていた。一糸まとわぬその体には目をそむけたくなるような数の蚯蚓腫れ、両手両足の詰めは無残に引きはがされておりところどころに焼き鏝を押し付けられたような跡もある。それだけではかろうじてまだ生きてると思っただろう。しかしナナの視界に無慈悲に飛び込んできたその光景は少女が生きていると思わせるには絶望的な程無理のある光景だった。

 目がなかった。鼻がなかった。歯がなかった。

「ぅ……グッ……オエエエェェェ……」

 今まで出会ったことのないような優しい少年に食べさせてもらった物をすべてその場にぶちまける。

「グヒヒヒヒ……目が覚めたか……」

「!?」

 まるで背筋に氷を入れられたような感覚をさせる様な声だった。

 恐る恐る見ると鉄格子の外から歪んだ笑みを浮かべてセルバーニと呼ばれていた男がこちらを凝視していた。その表情はゾッとするほど歪んでおりまるでお化けの様だ。

「お前とあのクソ野郎のせいでええええええ……すぐに奴隷がダメになってしまったじゃないかああ……」

 低いうなり声のような声を上げセルバーニと呼ばれていた男はその大きな体をゆすりながら牢屋の中に入ってくる。後ろには私兵と思われる兵士が二人ついていた。兵士が持っていた松明で牢屋全体が照らされる。

「ヒグッ!?」

 あまりの光景に一瞬呼吸が止まる。その光景は10歳の少女の心を完璧に打ち砕いた。

 自分からだいぶ離れたところにある沢山の拷問具、自分の周りにある沢山の、膨大な数の、死体。ウサギの耳を生やした少女の死体の周りには恐らくセルバーニが握っていた7本の鎖にそれぞれつながれていた少女たちの姿もあった。


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